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semスキン用のアイコン01 安部政権崩壊と『50年前の憲法大論争』 semスキン用のアイコン02

  

2007年 09月 15日

安部さんが首相を辞任し、世間では「無責任だ」「国会軽視だ」「空気が読めない」「幼稚だ」などとまたしても個人批判が続出していたが(大体そういうことを言う人こそ責任をとらない人達だと思うが)、僕にはなんとなく政局くさい感じがしていて、どう展開するのかなと思っていたら、あれよという間に福田さんが次期首相当確という、あまりにもスムーズな流れが出来ていた。

「安部首相になって、結局のところ改革が進まなかった」「次期首相には構造改革路線の継承と強いリーダーシップを期待する」というような話が聞かれるが、実際、安部さんが辞めることによって、というよりも前回の参議院選挙の結果により、改革路線は事実上頓挫しているので、次期首相にそのような改革を期待するのは無理というものだろう。
安部さんがやろうとしていたのは、「戦後レジームの脱却」ということで、その骨子は教育制度の改革、公務員制度の改革、そして憲法改正だった。最初にそういった話を聞いたとき、これはすごいことを言うけど、簡単にできないだろうなぁと思っていた。案の定、最も取り掛かりやすかった教育基本法の改正法案を通したところで安部さんは引きずり降ろされたわけだが、実際、公務員制度改革も憲法改正も勢いだけで出来る話ではない。これに反対する勢力は日本にもたくさんいるわけで、その集合体は、主に官僚であり、それとつるんだ政治家やマスコミであり、それに踊らされる世間である。結局のところ、安部さんは本筋と関係のないところで有象無象の幾多の手によって足を引っ張られ、引きずり降ろされたわけである。
首相就任以前より、安部さんはその若さ故に経験不足や人脈不足、政治的駆け引きができないことやはっきりものを言い過ぎることを懸念されてきたし、その政治思想も自民党の中にあっては反主流であった。それでも彼を選んだのは国民的人気があったからだろうが、では、僕らは彼に何を期待し、何を裏切られたのだろうか?

彼の政策である改革路線には僕自身当時も今も完全には了承できないのだが、ここ数年の政局の中で、この国はもうこのような改革、「小さな政府」的な流れでいくしかないのだろうかと懸念したものである。しかし、元々、この国はこういった性急な個人主義的、合理主義的な流れを容認しえないのである。(ライブドアや村上ファンドの挫折にしても同様であろう)

日本という国は中空構造である、ということを故河合隼雄さんが言っていた。要は中心がない円環構造であるということで、それは専制や突出を許さない、全体の流れやその場の空気といったものが最大の基準となって集団としての意思決定がなされるということである。確かに日本は昔から「和を以って尊し」と為し、大名の時代においても、大名自らの意思よりも家老らの合議による決定の方が優先されたのである。天皇制しかり。
合議とは元来、車座で行われるのを理想とされた。その中心は空であり、誰も突出できない。代表は輪番であり、連座制であった。それは輪であり、和である。(そして倭である) 
空気の読めない人間には政治ができない。正に日本的な発想であり、山本七平氏の名著『空気の研究』を読むまでもなく、それは古来より変わらぬ日本的イデーなのである。出る杭は打たれるし、個人は集団による「個人攻撃」によって、常に引きずり落とされてきたのである。(まるで今村映画『楢山節考』における村八分の生き埋めシーンを連想させる)
小泉純一郎が如何に特異な存在であったかと思い至る。(歴史的には織田信長や足利義満という名前も挙げられるが、彼らが絶頂期に同じように抹殺されていることを考えれば、ある意味で小泉さんの引き際は見事というほかない)

日本における「小さな政府」的な流れは確実に停滞するだろうけど、それも世の空気ならば仕方がない。(僕は今でも参議院選挙の結果よりそう思っている) それも日本風土に合わないことならば。
僕自身もアメリカン・スタンダードな合理主義が本当にこの国にとってよいとは全く思っていないし、昨今の希望格差の拡大こそは現代日本の最大の政治問題であり経済問題だと感じている。小泉・安部路線がこの格差を拡大していくことに間違いないのであれば、それは正しいことではないだろう。

それでも僕は安部さんを人間的にそれほど問題のある人間だとは思えず、どうしても親近の情を拭えないのは、僕も彼と同類だからだろうか。ホリエモンもそうかもしれない。駆け引きができず、正直すぎるのは時として生きていくのに難しい。特に政治や経営、そのトップの世界では、それは致命傷とでもいうべき欠陥なのだろうな。

a0035172_115536.jpgところで、、、ちょうど保阪正康編『50年前の憲法大論争』を読んだところだったので、昨今の憲法改正ブームも50年前と同じように盛り上がりを失い、憲法における現状の記述のあいまいさを尊重する(というか、国としてどっちを選択するとも結局のところ決定できないというどっちつかずの)形で落ち着くのだろうなと感じている。日本人は、個人として、日本人として、日本の国の責任を取りたがらないし、これまでもとってこなかった。個人として日本という国を代表するという感覚は殆どなく、先の戦争にしても、戦争責任は戦犯達のみにあって、日本国民としては責任を一切負わなかったわけだ。
まぁそれはともかくとして、改憲・護憲論争は日本国憲法制定から10年後でも現代でも全く同じ形で行われていることがある意味でとても新鮮であり、日本という国がここまで何も変わらずに至っているこということに驚き、そしてその普遍の不変性に改めて敬虔な思いにもさせられるのである。

ただ、この本の出版も少し「間」が悪かったかもしれない。。。
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by onomichi1969 | 2007-09-15 11:15 | | Trackback | Comments(5)

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Commented by bigblue909 at 2007-09-15 15:28
私も阿部さんは応援してました。確かにおぼっちゃまかもしれないけど、拉致被害者への貢献という実績もあるし、なんといっても若くてスッキリしてて、国の代表として出して恥ずかしくないというか(変な言い草かもしれないけどこれって大事なことだと思います!)。
参議院戦の時やめろやめろと言ってた人たちが、手の平を返したようにやめたと大騒ぎしてるのが不思議です。私、JR西日本の福知山脱線事故の時も思ったんですが、辞めるってものすごく簡単だと思うんです。だって、後処理の方がずっと大変で辛いですもん。そこで踏ん張ったあの社長はエラいと思ったし、まだまだやろうとした阿部さんもすごいなと。そりゃ体もおかしくするわなと。
ただね~やっぱり選んだ閣僚たちが足引っ張りすぎました。だからお坊ちゃまだと言われるのかもしれませんが、、、。
Commented by onomichi1969 at 2007-09-15 18:49
BBさん、こんばんわ。
安部さんは確かにおぼっちゃまですが、そんなこと言ったら政治家はほとんどおぼっちゃまとおじょうちゃまの集団になってしまいますw 田中真紀子なんて庶民的というよりもおじょうちゃまそのものに思えるし。(実際、ものすごいおじょうちゃまですけど)
政治家は誰でも叩けば埃がでるもので、昔の政治家達の巨額な収賄が絡んだ疑獄に比べたら、事務所費問題やナントカ還元水とか、領収書の2重処理なんて、スケールが小さいというか、ナントイウカ。。。どうでもいいこと、なんてい言ったら怒られそうですが。結局そういうのはメディアの匙加減でしかないような気がします。
Commented by onomichi1969 at 2007-09-15 18:51
(前につづく)
政治家には国権に関わる重要な仕事をきっちりとやってもらいたい。関係のないところで国会が停滞しすぎでしょう。官僚だって国策を担っているわけだから、僕らもそれなりの地位を認めてあげてもいいと思う。彼らは頭のよいエリートたちで、尚且つたくさん勉強して今の地位にあるのだから。僕らとは違うのだ。(安部さんはおぼっちゃんだけどエリートじゃないからこの辺のコンプレックスが結果的に裏目に出てしまったのかもしれませんね)
まぁ責任のとり方って難しいですね。そこには本来いろんな考え方があって、それをちゃんと説明すべきなんでしょうけど。なんとなくメディアの受け取り方次第って気がします。彼らが正解を決められるわけではないのですが。。
Commented by Tod&Pig at 2007-09-16 12:16 x
毎回楽しみに記事を読んでおりますが、今回特に熱心に読ませていただきました。安部政権については、「共謀罪」のような法案である組織犯罪処罰法の審議ほか、数々の法案の強硬採決などにより、青い僕でも「戦後レジーム」から抜けた、戦前のような政策に近づいてしまうのかなぁ、なんて考えたりもしました。
Commented by onomichi1969 at 2007-09-16 23:00
Tod&Pigさん、はじめまして、こんばんわ。
毎度ご拝読有難うございます。とても温かいお言葉(「楽しみ」!)を頂き大変励みになります。メインは音楽と映画のレビューですが、たまに小説や評論など、極たまに時事の話もいたしますので、今後とも宜しくお願いいたします。(と、Tod&Pigさんって18歳なんですね!お若い~)
「共謀罪」って相談しただけで捕まっちゃうという池田屋騒動みたいなアレですよね。条約批准に伴って、国際犯罪(テロ想定)の撲滅協力の為に必要だとかそうでないとか。昔、テレビでみたことがありますが、先の国会で審議だったんですね。そういう話ってなかなか伝わらないものです。
日本では組織犯罪に対して公安が対応することになります。公安はオウム以降その存在の存続否かの瀬戸際にありますから、国際テロ撲滅をスローガンに、Tod&Pigさんもご覧になった『A』での調子でやられたら、確かにちょっと怖いですよね。何か事件があれば世論は簡単に靡きますし。
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