Bryan Ferry “Boys and Girls”(1985)
2007年 06月 17日
Bryan Ferry “Boys and Girls”(1985)は、実は僕にとってリアルタイムで接した作品で、当時(高校生の頃)このアルバムを絶賛していた友達からレコード(かCDかテープ)を借りてダビングした記憶はあるが、それほど聴き込んではいなかった。ベストヒットUSAやMTVでもファースト・シングルの”Slave to Love”のPVは何度か観たし、CMでも流れた2ndシングルの”Don't Stop the Dance”や妖しいギターソロとリズムが特徴的な”Sensation”などがよく印象に残っているが、特に覚えていたのはブライアン・フェリーの独特の容姿、ダンディズムとでも言うべき雰囲気とPVやCMで魅せたあの「ユラユラ」ダンスなのであった。
まぁそれはそれとして、このアルバムを改めてCDで購入し、久々に聴いてみて、その楽曲のクオリティの高さには改めて感心したのだ。以来、この作品はよく聴いているが、特に上記にも挙げたA面の流れが素晴らしく、”Avalon”の世界を80年代という時代の中で直線的に止揚しながら、それにデジタルな味付けを絶妙に配合している。このアルバムは、ブライアン・フェリーの世界観、そのロマンチシズムが到達点と思われた”Avalon”からさえも華麗に飛躍していたことを改めて実感させてくれる。
”Avalon”という最上級の幻想を更に洗練させ、絶妙なデジタル処理によってポップ性を浮き上がらせたのがフェリーのソロワーク“Boys and Girls”(1985)なのである。故に、その存在は始源より「空虚」そのものと言えるのかもしれない。ポップ性=空虚さの中をゆらゆらと揺蕩(たゆた)う音と声、それはフェリーにとって、その崩壊も消滅も、それに伴う全ての恍惚と不安も自覚的な幻想そのものだったのだと思う。だからフェリーは踊り続けるしかなかったのだろう。あのダンス。自らに恍惚と酔いしれることによって、その幻想は初めて生きるのだ。
このアルバムの中で僕が好きな曲は、やはり、”Slave to Love”である。
この曲は、"Manifesto"(1979)の”Dance Away”や”Avalon”(1982)の”More Than This”といった曲にみられたフェリー独特のポップ性を着実に受け継ぎ、それを美しく完成させた名曲である。それは正に完成され、完璧で寸分の隙もない西洋絵画のように80年代というポップな時代の音楽的達成として永遠に受け継がれるであろう。とにかく素晴らしい曲である。
80年代という「空虚」を音楽的に体現した最上級に美しいアルバム。それが“Boys and Girls”(1985)である。このアルバムはロキシーの”Avalon”と共に80年代の時代を飾る名作であると同時に、ヨーロッパのロマンチシズムがその残滓を堅実に育んだ空中楼閣なのだといえる。
by onomichi1969 | 2007-06-17 00:06 | 80年代ロック | Trackback(1) | Comments(0)