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Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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2011年 07月 24日

寝盗られ宗介_a0035172_1445769.jpg原田芳雄さんが逝去されました。

新宿アウトロー、反逆のメロディという独特のワイルドなイメージが彼の代名詞だと思いますが、僕の中で原田芳雄と言えば、『竜馬暗殺』『はなれ瞽女おりん』『ツィゴイネルワイゼン』『浪人街』『われに撃つ用意あり』『寝盗られ宗介』といった作品が思い浮かびます。多くの出演作の中で、主演作品というのは思ったほど多くないのですね。最近は、『歩いても 歩いても』や『奇跡』で脇を固める渋いおじいちゃんの役がとても自然で結構ハマっていたと思います。

主演作を並べてみれば、主人公の個性がまさに原田芳雄のワイルドなイメージそのものであることが分かります。時代考証を越えた(現代的な)彼の個性が映画の個性にもなっていると言っていいでしょう。原田芳雄の竜馬は、やっぱり原田芳雄でしかなく、そのまま浪人街に繋がっていきます。そういう役者って、実はそれほど多くないでしょう。個性は違いますが、高倉健や勝新太郎などもそうかもしれません。故に、シリーズものは別にして、様々な役柄を主演としてこなすいうわけにはいかなかったのだと思います。その強烈な個性、イメージを中心に据えるということは、作品のバランスを容易に損なうリスクがあるからです。それを脇に据えてスパイスとするのとは全く違うのだと言えます。(松田優作の『家族ゲーム』や『探偵物語』のようにその個性を逆手に取るという戦略もあったでしょうけど)

さて、『寝盗られ宗介』は、つかこうへいの舞台作を若松孝二-原田芳雄のコンビで映画化した1992年の作品です。つか作品はよく知りませんが、映画『寝盗られ宗介』は、やはり主人公が原田芳雄ということで、彼独自のアウトローというイメージが纏わり付きます。中年のアウトロー。そこはかとないアウトロー。アウトローの末路と言えばいいでしょうか。とはいえ、別に拳銃を隠し持っている元テロリストというわけではなく、ただのドサ回り一座の座長にすぎないわけで、その存在はアウトローにしてはかなり頼りなく、庶民的です。さらに、女房を駆け落ちさせて、戻ってくる度に、彼女がまた自分を選んだことに自足し、恋愛感情を細々と持続させるという、主人公は、なんという姑息な人格でしょうか。
しかし、単純にそうとも感じられないのです。原田芳雄が主人公を演じることにより、それが人間として、正当であるような、そんな重みを錯覚させるのです。そして、『愛の賛歌』です。このクライマックスの歌が指し示す「深み」と「高み」は、その意外性と共に、映画そのものに大きなインパクトを与えています。観ている僕らを高揚させ、そのふわーっとした高みから物語も大団円を迎えるのです。人生っていいものだなぁ~なんてね。

この映画は、ストーリーに特筆するところはないのですが、やはり原田芳雄の存在感が光ります。それは主人公の役柄を超えます。その個性をじっくりと味わえるかどうか、それによって評価が分かれる作品なのだと思います。

ご冥福をお祈りします。

by onomichi1969 | 2011-07-24 18:05 | 日本の映画 | Trackback | Comments(0)

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