Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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semスキン用のアイコン01 <   2007年 06月 ( 13 )   > この月の画像一覧 semスキン用のアイコン02

  

semスキン用のアイコン01 Asia "Asia"(1982) semスキン用のアイコン02

  

2007年 06月 29日

a0035172_0424889.jpg80年代初期のプログレ・ハードにおけるひとつの頂点がエイジアだった。
それは、スーパーグループとしてのエイジアであり、全世界で1500万枚のセールスを記録したファースト・アルバムAsia(『詠時感~時へのロマン』)であり、全米No.1の大ヒットシングルHeat of the Momentであった。

今でもHeat of the Momentのイントロのギター音を聴くだけで痺れるのは、世代的な影響のせいだろうか。
単純化されポップ化されたプログレ。イエス、EL&P、キングクリムゾンの主力メンバーが奏でるヒットソング。そこに70年代の幻影は微塵もなく、正に80年代的ポップ&ハードを象徴した音楽だった。エイジアは、一夜にして、プログレ・ハードの代表格となり、金字塔となった。

しかし、その音楽はポップという名の時代の息吹を感じさせると共に、ある種の決意と相応の輝きに満ちていると僕は思う。プログレ黄金期の主力メンバー達による作品だからこそ感じる時代への確信性。正に80年代初期である。その音は今でも(というか今だからこそ)とても新鮮に感じる。
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by onomichi1969 | 2007-06-29 01:05 | 80年代ロック | Trackback(1) | Comments(2)

semスキン用のアイコン01 トパーズ semスキン用のアイコン02

  

2007年 06月 24日

a0035172_15532148.gif『トパーズ』は、村上龍の優れた連作小説である。そして映画は村上龍が監督した唯一「魅せる」作品でもある。

『トパーズ』は、SM嬢やホテトル嬢など、僕らから見たらどん底と思える仕事に従事している少女達の語りを通して、人が人として在るべきポジティブな姿が垣間見える不思議な味わいのある小説だ。悲惨な待遇を受け入れ、時に恐怖と隣り合わせにありながら、彼女達の語りは、単純に絶望しているとは思えない、何か一筋の光を思わせる、まさに宝石の如きキラキラとした輝きをみせるのである。彼女たちのアブノーマルな性質の中に見る実にノーマルな人間的輝きは、世界から沈下した彼女たちが見上げるアッパーサイドの僕たちの世界への視線であり、それはいつの間にか彼女たちと僕たちの関係性を超えて、生きていくことそのものの本質的な視線を捉えていく。逆に僕たちこそがこの世界に希望を持つことが叶わない存在としてあるのではないか。この作品は僕らにそう問いかけているように感じる。その捩れた問いが僕らに奇妙だが深い感慨をもたらす、実に不思議な感覚の小説なのである。

さて映画はどうかといえば、さすがに原作者が映画化しただけあって、そのモチーフはまた別の形をもって作品化されていると感じた。小説の特徴である少女たちの「語り」は確かに映画で表現でき得るものではないが、語りが沈黙へと変化してもそのモチーフは十分に理解できたように思う。小説が「語り」を手段としたのに対し、映画は彼女たちと僕たちの「視線」そのものを描くことによって、この作品のモチーフを再構築してみせる。その視線はとても静かである。それがこの映画を「魅せる」作品と感じさせる所以なのだろう。 (2004-07-17)
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by onomichi1969 | 2007-06-24 15:54 | 日本の映画 | Trackback | Comments(2)

semスキン用のアイコン01 レコード・コレクターズ 60年代ロック・アルバム・ベスト100 semスキン用のアイコン02

  

2007年 06月 23日

a0035172_0143841.jpg70年代編を買った時にバックナンバーで同書5月号(レココレ 2007 Vol.26, No.5)も購入。
遅ればせながら、これまで(70年代80年代)と同様に60年代ランキングの照合してみると、、、

レコード・コレクターズ創刊25周年特別企画
2007年4月14日 (土)
60年代ロック・アルバム・ベスト100

1位 The Beach Boys / Pet Sounds
2位 Bob Dylan / Highway 61 Revisited
3位 The Band / Music From Big Pink
4位 The Rolling Stones / Let It Bleed
5位 King Crimson / In The Court Of The Crimson King
6位 Led Zeppelin / Led Zeppelin
7位 The Beatles / Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
8位 The Beatles / Revolver
9位 The Rolling Stones / Beggers Banquet
10位 Jimi Hendrix / Electric Ladyland

11位 Bob Dylan / Blonde On Blonde
12位 Velvet Underground / Velvet Underground & Nico
13位 Jimi Hendrix / Are You Experienced
14位 Beatles / Rubber Soul
15位 Who / My Generation
16位 Mothers of Invention / Freak Out !
17位 Captain Beefheart / Trout Mask Replica
18位 Pink Floyd / Piper At The Gates Of Dawn
19位 Crosby, Stills & Nash / Crosby Stills & Nash
20位 Buffalo Springfield / Again

21位 Band / Band
22位 Beatles / The Beatles (White Album)
23位 Cream / Disraeli Gears
24位 Doors / Doors
25位 Big Brother & The Holding Company / Cheap Thrills
26位 John Mayall / Bluesbreakers With Eric Clapton
27位 Beatles / Abbey Road
28位 Sly & The Family Stone / Stand !
29位 Jefferson Airplane / Surrealistic Pillow
30位 Led Zeppelin / Led Zeppelin II

31位 Laura Nyro / Eli And The Thirteenth Confession
32位 Traffic / Mr Fantasy
33位 Lovin' Spoonful / Do You Believe In Magic
34位 Kinks / Something Else By The Kinks
35位 Zombies / Odessey & Oracle
36位 MC 5 / Kick Out The Jams
37位 Kinks / Are The Village Green Preservation Society
38位 Beatles / Meet The Beatles
39位 Jeff Beck / Truth
40位 Fairport Convention / Liege And Lief

41位 Stooges / Stoogesiggy Pop
42位 Roger Nichols / Small Circle Of Friends
43位 Blind Faith / Blind Faith
44位 Doors / Strange Days
45位 Who / Tommy
46位 Cream / Wheels Of Fire
47位 Byrds / Mr Tambourine Man
48位 Bob Dylan / Bringing It All Back Home
49位 Ronettes / ...Presenting The Fabulous Ronnettes
50位 Elvis Presley / From Elvis In Memphis

51位 Rolling Stones / Aftermath
52位 Traffic / Traffic
53位 Van Dyke Parks / Song Cycle
54位 Byrds / Younger Than Yesterday
55位 Beatles / Please Please Me
56位 Bob Dylan / Freewheelin
57位 Small Faces / Ogdens Nut Gone Flake
58位 Creedence Clearwater Revival / Green River
59位 Creedence Clearwater Revival / Bayou Country
60位 Phil Spector / Christmas Gift For You From Phil Spector

61位 Association / Birthday
62位 Grateful Dead / Live / Dead
63位 Jimi Hendrix / Axis: Bold As Love
64位 Nick Drake / Five Leaves Left
65位 Neil Young / Everybody Knows This Is Nowhere
66位 Paul Butterfield Blues Band / Paul Butterfield Blues Band
67位 Julie Driscoll, Brian Auger & the Trinity / Streetnoise
68位 Johnny Cash / Live At San Quentin
69位 Byrds / Sweetheart Of The Rodeo
70位 Beatles / Hard Day's Night

71位 Buffalo Springfield / Buffalo Springfield
72位 Millennium / Begin
73位 Yardbirds / Five Live Yardbirds
74位 Velvet Underground / White Light / White Heat
75位 Harry Nilsson / ハリー ニルソンの肖像
76位 Fairport Convention / Unhalfbricking
77位 Laura Nyro / First Songs
78位 Frank Zappa / Hot Rats
79位 Simon & Garfunkel / Bookends
80位 Small Faces / Small Faces

81位 Donovan / Sunshine Superma
82位 Laura Nyro / New York Tenderberry
83位 Neil Young / Neil Young
84位 Vanilla Fudge / Vanilla Fudge
85位 Paul Butterfield Blues Band / East West
86位 Johnny Cash / At Folsom Prison
87位 Free / Free
88位 Traffic / Last Exit
89位 Holy Modal Rounders / Moray Eels Eat The Holy Modalrounders
90位 Yardbirds / Roger The Engineer

91位 Walker Brothers / ダンス天国(廃盤)
92位 Georgie Fame / Rhythm & Blues At The Flamingo(廃盤)
93位 Ventures / Knock Me Out
94位 Van Morrison / Astral Weeks
95位 Jefferson Airplane / Volunteers
96位 Richard Harris / Tramp Shining
97位 Shaggs / Philosophy Of The World
98位 Spencer Davis Group / Autumn'66(廃盤)
99位 Procol Harum / Whiter Shade Of Pale
100位 Simon & Garfunkel / Parsley, Sage Rosemary And Thyme

聴いたことがあるアルバムは以下の45枚(持っているのは41枚)でした。(カッコ付き番号は昔持っていたもの)

1,2,3,4,5,(6),7,8,9,10,11,12,13,14,15,18,20,21,
22,24,25,27,28,(29),30,34,37,39,43,44,45,46,
47,51,53,57,62,65,(70),80,(84),85,86,87,94

まぁ前半は、わりと妥当な順位でしょうね。後半はこれまでも言及している通り、アンケート故のばらつきもあるので、参考(興味)程度の扱いでみておけばいいのかなと。
そう考えると、単純に順位の信憑性としてはベスト50ぐらいに絞った方がよいのかもしれませんね。

ちなみに僕が好きな60年代ロック・アルバム25枚とは11枚ほど被ってます。

とりあえず、これでこのシリーズも一応終わりということで。。。

レココレ 60年代のベスト100<評論家選出>
レココレ 70年代のベスト100<評論家選出>
レココレ 80年代のベスト100<評論家選出>
レココレ 60~80年代のベスト100<評論家選出>
レココレ 60~80年代のベスト100<読者選出>
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by onomichi1969 | 2007-06-23 23:59 | ランキング | Trackback | Comments(0)

semスキン用のアイコン01 僕が好きな60年代ロック・アルバム25枚 semスキン用のアイコン02

  

2007年 06月 23日

70年代80年代90/00年代の次は、さかのぼって60年代です。

この時代の音楽は相変わらず熱いですね。

a0035172_0153277.jpga0035172_0155479.jpg


1 The Beach Boys / All Summer Long / 1964
2 The Greatful Dead / At Fillmore West Palladium,'64 / 1964
3 The Who / A Quick One / 1966
4 Bafferlow Springfeirld / Again / 1967
5 Jimi Hendrix Experience / Are You Experienced / 1967
6 Otis Redding / Live In Europe / 1967
7 The Doors / The Doors / 1967
8 The Velvet Undergound & Nico / The Velvet Undergound & Nico / 1967
9 The Young Rascals / Groovin' / 1967
10 Aretha Franklin / Lady Soul / 1968
11 Bloomfield Kooper Stills / Super Session / 1968
12 Bob Dylan / Nashville Skyline / 1968
13 Johnny Cash / At Folsom Prison / 1968
14 Manfred Mann / Mighty Garvey! / 1968
15 The Band / Music From Big Pink / 1968
16 The Beatles / The Beatles / 1968
17 Blind Faith / Blind Faith / 1969
18 Delaney & Bonnie / Original Delaney & Bonnie and Friends / 1969
19 Fleetwood Mac / Einglish Rose / 1969
20 Janis Joplin / I Got Dem Ol' Kozmic Blues Again Mama ! / 1969
21 Led Zeppelin / Led Zeppelin Ⅱ / 1969
22 Neil Young with Crazy Horse / Everybody Knows This is Nowhere / 1969
23 The Kinks / Arthur or the decline and fall of The British Empire / 1969
24 The Rolling Stones / Let It Bleed / 1969
25 The Small Faces / The Autumn Stone / 1969
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by onomichi1969 | 2007-06-23 01:37 | ランキング | Trackback | Comments(0)

semスキン用のアイコン01 福岡伸一 『生物と無生物のあいだ』 semスキン用のアイコン02

  

2007年 06月 20日

a0035172_01876.jpgまるでミルハウザーの短編小説のようだ。分子生物学の解説書でありながら、その静謐な筆致の中にささやかな情念が垣間見える。そのエッセンスは正しく文学的である。

「生命とは何か」が本書のテーマである。
著者はそれを「動的平衡にある流れ」と言う。
人間には60兆もの細胞があるが、その多くの細胞は新陳代謝により、凡そ2~3ヶ月で殆ど入れ替わるという。つまり、2~3ヶ月前の自分と今の自分は全く違う体なのだと言える。しかし、人がそれを意識することはまずない。なぜならば、短いスパンで言えば、変わらない自分が常にそこにあり、僕らはそれを疑い得ないから。(それは脳細胞だけは入れ替わらない(増殖せずに死滅する一方である)為に記憶(こころ)は変わりようがないからだとも言える。池谷裕二の『進化しすぎた脳』より) ただ、そういった事実を知れば、今ある自分の体が全く堅牢でない、ゆらぎの中で平衡した状態、その流れの一過程にすぎないことに神秘的な感動を覚えてしまう。生命という瞬間のダイナミズム。

生命とは自己複製するシステムである。
それこそがエントロピーの死に抗して、人が秩序を維持しうる生命の特質である。動的平衡。生命が絶え間なく壊され、且つ維持しうる秩序。流れが流れつつもバランスを保った系。それは強固な耐久性をもつ堅牢なシステムとは違う、新しい生命の概念であった。

また生命は、環境変化に対する適応として、内的恒常性の維持の為に「柔らかな」相補性を有する。例えば仮にある遺伝子に欠落があり必要なタンパク質を生成する機能が失われたとしても、生命はそのタンパク質を生成するための別のバイパスプロセスを経時的に選択し、それを定常化することが可能なのだ。人は可変であることを受け入れるフレキシブルなバックアップシステムをもつのである。

「生命とは何か」
何人かの偉大なる先人(科学者)達の亡霊を、その生き様の影を想起しつつ、著者はこの問いを自らの生き方の中で反芻していく。本書はそんな著者の、オースターの『孤独の発明』に比する、青春の書ともいえる。研究を個人的な体験と捉えつつ、そこで得られる疑義とゆらぎ。欲望。バイブレーション。様々な思念が文章から立ち上る。

最近、池谷裕二、茂木健一郎、福岡伸一と読み繋いできて、科学者達が問う、こころ、クオリア、生命というタームにとても新鮮な感動を覚えている。
こういったサイエンスベーストの存在論と言えば、90年代初頭に流行った、多田富雄の『免疫の意味論』や養老孟司『唯脳論』を思い浮かべることができる。あれから15年程経ち、科学、特に分子生物学は驚くべき進歩を遂げているようだ。脳神経学や免疫、ゲノムの分野から生命や自己という存在を考察する論考はこれからも多く出てくるだろう。それは所詮、「様々なる意匠」なのかもしれないが、また、生命という広大な宇宙に魅せられ、その神秘を垣間見、畏怖することによってこそ得られる敬虔な認識論だとも言える。福岡伸一の文章を読んで、改めて僕はそう感じた。そのリアリティが真摯であり、感動的なのである。
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by onomichi1969 | 2007-06-20 23:39 | | Trackback | Comments(0)

semスキン用のアイコン01 福岡伸一 『プリオン説はほんとうか? タンパク質病原体説をめぐるミステリー』 semスキン用のアイコン02

  

2007年 06月 17日

a0035172_23222529.jpgプリオンというのは狂牛病に代表される伝達性スポンジ状脳症の原因物質のことを言う。プリオンは感染症の原因であるウィルスや細菌のような病原体と違い、遺伝子としての核酸を持たないことに特徴がある。つまり、プリオンはタンパク質だけから成り立つ物質であって、生命情報を有していない、にも関わらず単独で感染し、増殖し、狂牛病を引き起こすと言われている。このプリオン説の提唱者であるスタンリー・プルシナーは1997年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。これによって、当初は奇説と言われていたプリオン説が本分野の正統な学説となったということである。
プリオン説は、そのユニークな内容と病症の関心の高さ故に新聞でも大きく取り上げられ、センセーショナルな発見として高い注目を浴びて1980年代に登場した。奇怪な学説ながら、そのカウンターメジャーであるウィルス説に決定的な進展がなく(つまりは原因となるウィルスが全く見つからず)、プリオンそのものが病原体であるという決定打(直接的証拠)はないものの、状況証拠が積み重ねられ、多大な傍証を埋めることによって、学説として最も信頼できるという現在の地位を確立した。
著者は、そんなプリオン説に疑義を申し立てる。それはノーベル賞学説への再審請求ともとれるものであるが、そもそも、プリオン説には様々な未決の問題点があるにも関わらず、あっという間に正統の位置に付いてしまったことがそれこそ問題だったようである。普通に考えれば感染し増殖する生物には必ず核酸=遺伝子が存在する。プリオンはそんな生物学のセントラルドグマを否定し、これまでの科学的蓄積に真っ向から反対するような存在である。説明のための架空的物質がいつの間にか学説として認められてしまった。僕は、電磁波が、昔はエーテルと呼ばれる全空間を満たす透明の媒質の振動として説明されたことを思い出した。現在は否定されているが、そのような学説が正統の地位にあった時代もあったのである。まさに科学は、あらゆる反証の可能性を乗り越えたところに見出されるべきものであり、仮説は様々に検証され実証されなければならない。但し、その先に真実があるかどうか、それは難しい問題である。
本書は、反プリオン説の立場から、狂牛病に代表される伝達性スポンジ状脳症の研究史と、プリオン説の解説と問題点の提示、そして仮説の示唆を含むものである。確かに著者があとがきで述べているようにその反証については未だデータが揃っておらず、そういった学術的な意味合いから本書を位置づけると中途半端な面は否めない。しかし、本書は一般大衆科学書、ブルーバックスである。著者が言うように本書の目的はあくまでプリオン説の一般的解説であると共に、このプリオン問題が如何に「生命の謎」という命題に直接的に関係しているかを示すこと、そして科学というもののあり方、その現在を真摯に提示することにある。それらは一般読者の関心へと素直に結びつくのだ。

さて、上記のような内容と目的で書かれた本書であるが、とにかく読物として面白くて、僕は一気に読んでしまった。中盤はかなり専門的な内容になるけれど、解説が平易で客観的かつ論理的である為にとても読みやすい。そもそも僕はプリオンなんてものに全く関心がないまま本書を読み始めたのであるが、すっかりはまってしまったようだ。
冒頭の伝達性スポンジ状脳症の歴史からプリオン説提示に至るまでの過程などは、優れたノンフィクション小説のようで、僕はまるでカポーティの『冷血』を読んでいるような気分になった。そして、終盤にようやく著者の反証が始まるところからは優れたアームチェア・ディテクティブになり、今度は島田荘司の『占星術殺人事件』を思い出した。実際に著者はプリオン説を立証してきた過去のデータをもう一度再検証することによって、プリオン説に真っ向から反証してみせる。これはまさに『占星術~』の世界でしょう。それであっと驚く真相が明らかになる、、、というところまではいかないけれど、読み応えは十分あったのである。これは良質のミステリーを読んだ時の感触にとても似ている。

結局のところ、プリオン説なのか、ウィルス説なのかは今後の科学的進歩によって解決へと導かれるところもあろうかと思う。しかし科学というのは常にリアルタイムで確証されていくものである。本書はそんな科学という場面のリアルな実感を読み手に伝えることに成功している。そのスリリングな展開は、ブルーバックスながら2005年度の新書大賞2位をとり、講談社出版文化賞他を受賞しているのもうなずける内容であった。

ちなみにAmazon引用の表紙写真に「本当に安全か?米国産牛肉の輸入再開」という謳い文句があるが、本書の内容と目的はそのことと直接関係のない話である。(僕の買った本にはそのような帯はついていなかった)
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by onomichi1969 | 2007-06-17 23:58 | | Trackback | Comments(0)

semスキン用のアイコン01 Bryan Ferry “Boys and Girls”(1985) semスキン用のアイコン02

  

2007年 06月 17日

a0035172_23324423.jpg以前、ロキシーミュージックの作品をいくつか紹介し、彼らの足跡の頂点として”Avalon”(1982)を位置づけたことがある。そのレビューの中で彼らの音楽的形而上性の達成を僕なりに表現して完結したつもりになっていたが、その際のコメントで或る方からブライアン・フェリーのソロを忘れてませんか?という「金言」をいただき、確かに然りということで、その後早々にフェリーのソロを購入してじっくり聴いてみた。

Bryan Ferry “Boys and Girls”(1985)は、実は僕にとってリアルタイムで接した作品で、当時(高校生の頃)このアルバムを絶賛していた友達からレコード(かCDかテープ)を借りてダビングした記憶はあるが、それほど聴き込んではいなかった。ベストヒットUSAやMTVでもファースト・シングルの”Slave to Love”のPVは何度か観たし、CMでも流れた2ndシングルの”Don't Stop the Dance”や妖しいギターソロとリズムが特徴的な”Sensation”などがよく印象に残っているが、特に覚えていたのはブライアン・フェリーの独特の容姿、ダンディズムとでも言うべき雰囲気とPVやCMで魅せたあの「ユラユラ」ダンスなのであった。
まぁそれはそれとして、このアルバムを改めてCDで購入し、久々に聴いてみて、その楽曲のクオリティの高さには改めて感心したのだ。以来、この作品はよく聴いているが、特に上記にも挙げたA面の流れが素晴らしく、”Avalon”の世界を80年代という時代の中で直線的に止揚しながら、それにデジタルな味付けを絶妙に配合している。このアルバムは、ブライアン・フェリーの世界観、そのロマンチシズムが到達点と思われた”Avalon”からさえも華麗に飛躍していたことを改めて実感させてくれる。

”Avalon”という最上級の幻想を更に洗練させ、絶妙なデジタル処理によってポップ性を浮き上がらせたのがフェリーのソロワーク“Boys and Girls”(1985)なのである。故に、その存在は始源より「空虚」そのものと言えるのかもしれない。ポップ性=空虚さの中をゆらゆらと揺蕩(たゆた)う音と声、それはフェリーにとって、その崩壊も消滅も、それに伴う全ての恍惚と不安も自覚的な幻想そのものだったのだと思う。だからフェリーは踊り続けるしかなかったのだろう。あのダンス。自らに恍惚と酔いしれることによって、その幻想は初めて生きるのだ。

このアルバムの中で僕が好きな曲は、やはり、”Slave to Love”である。
この曲は、"Manifesto"(1979)の”Dance Away”や”Avalon”(1982)の”More Than This”といった曲にみられたフェリー独特のポップ性を着実に受け継ぎ、それを美しく完成させた名曲である。それは正に完成され、完璧で寸分の隙もない西洋絵画のように80年代というポップな時代の音楽的達成として永遠に受け継がれるであろう。とにかく素晴らしい曲である。

80年代という「空虚」を音楽的に体現した最上級に美しいアルバム。それが“Boys and Girls”(1985)である。このアルバムはロキシーの”Avalon”と共に80年代の時代を飾る名作であると同時に、ヨーロッパのロマンチシズムがその残滓を堅実に育んだ空中楼閣なのだといえる。
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by onomichi1969 | 2007-06-17 00:06 | 80年代ロック | Trackback(1) | Comments(0)

semスキン用のアイコン01 レコード・コレクターズ 80年代ロック・アルバム・ベスト100 semスキン用のアイコン02

  

2007年 06月 16日

a0035172_0135462.jpgレココレ7月号(2007 Vol.26, No.7)を買いました!
今回は我らが青春時代、80年代ロック・アルバム・ベスト100です。事前に僕が好きな80年代ロック・アルバム25枚を選んでいたのですが、今回のレココレのセレクションとは10枚ほど重なりました。(本当はもう4~5枚くらいは被るかなと思っていたのですが、、、) 
今回のセレクションについては、他の方もコメントしていましたが、AORハードと呼ばれるようなTOTOやフォリナー、スティクスのあのアルバム達が入ってなかったり、いわゆるアメリカン・ストレート・ロックとでも言うべきブルース・スプリングスティーンの代表作やジョン・クーガー・メレンキャンプ、ブライアン・アダムス等の作品がなかったり、HR/HMの分野にも偏りがあって、かなり違和感のあるランキングだと感じました。
時代に対して前衛/先鋭的な作風を好まれているようですが、80年代というのはやはりロックの大衆化というのが歴史的な現象ですので、ポップな魅力溢れるアルバムをもっと素直に選んでもいいのではないかと思うのです。
レココレ1位のアルバムについては、これまでの名盤特集でも常連の作品ですが、これが1位と言われると結構意外です。あと、、、正直言って、1位の作品評は何を言っているのかさっぱり意味が分からないです。。。<何なんでしょうこの人はって感じ、、、>

レコード・コレクターズ創刊25周年特別企画
2007年6月14日 (木)
80年代ロック・アルバム・ベスト100

1位 Talking Heads / Remain In Light
2位 U2 / Joshua Tree
3位 Scritti Politti / Cupid & Psyche 85
4位 Donald Fagen / The Nightfly
5位 The Police / Synchronicity
6位 Prefab Sprout / Steve McQueen
7位 The Pop Group / For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?
8位 Beastie Boys / Licence To Ill
9位 Peter Gabriel / So
10位 Sonic Youth / Daydream Nation

11位 Style Council / Our Favourite Shop
12位 Lou Reed / New York
13位 Prince / Sign 'O' The Times
14位 Style Counsil / Cafe Bleu
15位 Smith / Smith
16位 Roxy Music / Avalon
17位 Joy Division / Closer
18位 Clash / Sandinista!
19位 U2 / War
20位 John Lennon & Yoko Ono / Double Fantasy

21位 Keith Richards / Talk Is Cheap
22位 XTC / Black Sea
23位 Ben Watt / North Marine Drive
24位 Public Image Ltd. / Flowers Of Roamnce
25位 Aztec Camera / High Land Hard Rain
26位 Blue Nile / Hats
27位 Prince / 1999
28位 Rolling Stones / Tatoo You
29位 Young Marble Giants / Colossal Youth
30位 Jesus & Mary Chain / Psychocandy

31位 Brian Wilson / Brian Wilson
32位 Guns N' Roses / Appetite For Destruction
33位 Fairground Attraction / First Of A Million Kisses
34位 R.E.M. / Murmur -i.r.s. Years'84-
35位 Huey Lewis & The News / Sports
36位 Prince / Around The World In A Day
37位 Steely Dan / Gaucho
38位 Pale Fountains / Pacific Street
39位 John Hiatt / Bring The Family
40位 Michael Jackson / Thriller

41位 Elvis Costello / King of America
42位 Tom Waits / Rain Dogs
43位 Smith / Queen Is Dead
44位 Stone Roses / Stone Roses
45位 XTC / English Settlement
46位 AC/DC / Back In Black
47位 Steve Winwood / Back in the High Life
48位 XTC / Skylarking
49位 Los Lobos / How Will the Wolf Survive?
50位 Fabrizio De Andre / Creuza De Ma - 地中海の道程(廃盤)

51位 Smith / Meat Is Murder
52位 Buggles / Age of Plastic
53位 Paul Simon / Graceland
54位 Prince / Purple Rain
55位 Brave Combo / Humansville(廃盤)
56位 R.E.M. / Document
57位 Neville Brothers / Yellow Moon
58位 Paul McCartney / Tug Of War
59位 Napalm Death / Scum
60位 Madonna / Like A Virgin

61位 Ambitious Lovers / Greed
62位 De La Soul / 3 Feet High and Rising
63位 New Order / Substance 1987
64位 Black Flag / Damaged
65位 Serge Gainsbourg / Love on the Beat
66位 Metallica / Master of Puppets
67位 Motorhead / Ace Of Spades
68位 Feelies / Crazy Rhythms(廃盤)
69位 Patti Smith / Dream of Life
70位 Waterboys / Fisherman's Blues

71位 Talking Heads / Stop Making Sense
72位 Durutti Column / Return of the Durutti Column
73位 Public Enemy / It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back
74位 Iron Maiden / Number of the Beast
75位 Bob Dylan / Oh Mercy
76位 Leonard Cohen / I'm Your Man
77位 Big Black / Atomizer(廃盤)
78位 Peter Gabriel / 3
79位 Robyn Hitchcock & The Egyptian / Queen Elvis(廃盤)
80位 Stevie Ray Vaughan / Texas Flood

81位 UB40 / Sigining Off
82位 Bruce Springsteen / Nebraska
83位 Prefab Sprout / From Langley Park To Memphis
84位 Motorhead / No Sleep Till Hammersmith
85位 Joni Mitchell / Shadows And Light
86位 Pogues / If I Should Fall From Grace With God
87位 Joe Jackson / Night And Day
88位 Elvis Costello / Spike
89位 Airplay / Airplay - ロマンティック
90位 Discharge / Why

91位 Billy Joel / Glass Houses
92位 Bonnie Raitt / Nick Of Time
93位 Hall & Oates / Private Eyes
94位 Kate Bush / The Dreamin
95位 Robert Wyatt / Old Rottenhat
96位 Discharge / Hear Nothing See Nothing Say Nothing
97位 Specials / More Specials
98位 Tom Petty & the Heartbreakers / Buck Up the Plantation
99位 John Hiatt / Slow Turning(廃盤)
100位 Elvis Costello / Get Happy!

ちなみにランキングの中で僕が聴いたことがある(持っている)アルバムは以下の39枚(31枚)でした。(カッコ付き番号は昔持っていたもの)
1,2,3,4,(5),6,9,11,13,14,16,17,(19),(20),(22),24,27,28,31,32,(35),36,40,41,42,43,46,47,(51),52,54,(60),66,74,82,(87),88,89,98

70年代の時と同じように後半にいくに従い、聴いたことがないアルバムが並びます。

ブライアン・ウィルソンが上位に入っているのはやはり今現在選んだからこそのランキングなのだと思います。僕だったら、この時代のブライアンよりも、ビーチボーイズのKeepin' the Summer Aliveを選ぶんですけどね。確かにブライアンもデニスもダメだけど、カールとマイク、それにアルとブライアン・ジョンストンがいるぞって感じで、メンバーの個性がうまく表現された70年代のSunflowerを彷彿とさせるアルバムだと思うのです。(Love Youなんかよりよっぽどいいと思うのだけど) まぁ、この辺りは個人的な好みですから、どうでもいいです。

次は90年代かと思ったら、もう終わりなんですね。
本当は90年代の情報が一番知りたいのですけど。。。

レココレ 60年代のベスト100<評論家選出>
レココレ 70年代のベスト100<評論家選出>
レココレ 80年代のベスト100<評論家選出>
レココレ 60~80年代のベスト100<評論家選出>
レココレ 60~80年代のベスト100<読者選出>
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by onomichi1969 | 2007-06-16 00:51 | ランキング | Trackback | Comments(2)

semスキン用のアイコン01 12人の優しい日本人 semスキン用のアイコン02

  

2007年 06月 10日

a0035172_15241583.jpg敢えて断言。『12人の優しい日本人』は、『十二人の怒れる男』よりも断然面白い!!

ふぅ、言ってしまった。。。はっきり言って推理劇タッチの『怒れる男』は僕のようなアンチミステリー派にとって、あまりにも真実を一元化しすぎているし、社会派を標榜する割りには陪審員制度の問題点を真の意味で論うことなく、居丈高な民主主義の価値観や義務感によって自ら正義を負う者として規定し、皆が一つの真実を追うことに固執すること、そのことを美化しすぎているように思える。本当の真実とはこうなんだ! こうあるべきなんだ!ってね。また、登場人物たちにはそれぞれのナラティブがあり、それは当然一つに集約すべきものではないのだ。すべての思惑が一つの真実を指し示すなんてあまりにも予定調和すぎる。所詮、おめぇたちは一般市民じゃねぇのかよ。。。などと陪審員制度自体に馴染みがない僕なんかは『怒れる男』を観た時に素直にそう思ったものです。

それに比べ、この『優しい日本人』は実に「いい」加減で、最期まで正義に固執しない姿勢がとても晴れやかだし、陪審員制度が日本人に合わないことを明確に主張しているように思える。なおかつ人間描写が多分にデフォルメされてはいるけどとにかく面白い。『怒れる男』のパロディ映画としても秀逸だと思うが、これは本編に対する一種のアンチテーゼでもある。

所詮、人に人は裁けないと思うよ。僕は怒れる男であるより、優しい日本人でありたいと思うけどなぁ。『真実の行方』って映画があったけど、あの映画のラストシーンを『怒れる男』に対比してみると面白いかも。 (2003-09-06)

<追記>『十二人の怒れる男』と共に、アメリカの法廷劇と言えば、『アラバマ物語』も忘れられない映画である。共にアメリカにとっての正義とは何かを深く考えさせられる名作であろう。
それとは別に、このレビューを書いた当時は全く念頭になかったことだけど、日本にも裁判員制度が適用されることになった。これによって日本の裁判そのものが変わっていくことになるだろうが、果たしてそれがいいことなのかどうなのか、正直いって僕にはよく分からないが、少なくとも、この映画で描かれたようなことが実際に起こらないとも限らない。それがまた今の裁判制度が抱える様々な問題を解決する道すじを示すものなのかどうなのか、やっぱり僕には分かりませ~ん。
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by onomichi1969 | 2007-06-10 15:34 | 日本の映画 | Trackback | Comments(0)

semスキン用のアイコン01 櫻の園 semスキン用のアイコン02

  

2007年 06月 10日

a0035172_15114669.jpgこの監督の映画、『櫻の園』もそうだけど、『12人の優しい日本人』や『Lie Lie Lie』と結構忘れがたい印象を残す。寡作なので、もっと撮って欲しいなぁと思うんだけど、考えてみればこの映画も10年以上前の作品なんだな。(現時点ではもう17年前か、、、)

この映画で描かれた女子高生達の微妙な揺らめきも同時代性を失った今では「微妙さ」がすっとんで、単なる昔の一風変わった女子高生群像劇ものになってしまったか? でも、この映画、リアルさだけを狙ったのなら当時もあそこまで評価されなかったと思うよ。清廉さの裏にあるちょっとした歪(いびつ)さ、心に潜む澱(おり)から揺蕩(たゆた)う無意識の妖しさ、その微妙さ故に惹かれたんだよな。ただ、それって70年代以降の少女漫画の世界そのものでもある。それに初めて気がついた当時のオトナたち。そういう意味でエポックメーキングな映画だったのかもしれない。

<追記>最近になり、この映画が80年代の少女漫画を原作にしたものと知った。(吉田秋生、僕は知らなかったのだ)「70年代の少女漫画が<性的身体を抱えた少女の内面>を克明に描いていたのに対し、80年代の少女漫画は全く性なきメディアと化した」とは、ある評論家の分析である。残念ながら原作を読む機会もないので、吉田秋生の作品傾向について知ることはできないが、僕の感じからすれば、80年代の漫画「櫻の園」から中原俊が汲み取り、映画的手法によって捉え直そうとしたものは、明らかに70年代的な「内面」の欠片である。80年代的感性を通過しながらも画一性によってシミュレートされない生身の少女性ではなかったか。それは80年代後半という時代の狭間から見え出たある種の瞬きのようなもので、今や時代的リアリティを失っているのかもしれないが。まぁ中原世代の少女性に対する思い込みと捉えられないこともないけど、そんなアンビバレンツさも魅力かな。 (2003-09-28)
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by onomichi1969 | 2007-06-10 15:15 | 日本の映画 | Trackback | Comments(0)

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