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Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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semスキン用のアイコン01 Neil Young & Crazy Horse ”Ragged Glory”(1990) 『傷だらけの栄光』 semスキン用のアイコン02

  

2010年 02月 02日

Neil Young & Crazy Horse ”Ragged Glory”(1990) 『傷だらけの栄光』_a0035172_1594563.jpgニール・ヤングがグランジおやじだったなんて初めて知った。90年代も奥が深い。。
このところ、リアルタイムでは殆ど聴いたことがなかったニール・ヤングの80年代、90年代の代表作を聴いている。
ニール・ヤングにとって、80年代はexperimental yearsだそうで、おそらくテクノに挑戦したアルバム”Trans”(1982)のイメージが強いのだと思うけど、要は彼にとって試行錯誤の時代だったいうことなのだろう。そんな曲折の80年代を吹っ飛ばすかのようなロックンロールアルバム。それが1990年に発表された”Ragged Glory” 『傷だらけの栄光』であった。
ニールとクレイジーホースにとっての久々の快作であり、吹っ切れたようなギターサウンドを存分に聴かせる90年代の代表作と言えよう。60年代のDown by the RiverやCowgirl in the Sand、70年代のHey Hey, My My(Into the Black)以来のフィードバック・ノイジー全開のギターサウンドが全編に満ち溢れると共に、キャッチーで明るいメロディが特徴的。クレイジーホースがこの時期にしてこのようなサウンドを掴んだのは、おそらく80年代後半のR.E.M.のようなギターポップが一躍メジャーとなり、Guns'n Rosesがギターアンサンブルを復興し、その後のソニック・ユースやニルヴァーナのようなオルタナ全盛時代を準備した1990年という時期故のことだったのだろう。
但し、これだけは言っておきたいが、”Ragged Glory”は、ニールとクレイジーホースにとって完全なるオリジナルサウンドであり、そのスタイルは迷走の80年代をすっ飛ばしてみれば、60年代から連なる何の変哲もない彼ら独自のサウンドなのである。冒頭のCountry Homeはアルバムを象徴する名曲だけど、この曲は70年代中期にニールのライブでは既に演奏されていたナンバーだという。そういった意味でこのアルバムは、時代を超越していると感じる。70年代も80年代もない、時代という屈託のない、今聴いても新しいと同時に古めかしい正真正銘のロックンロールアルバムなのだ。

このアルバムの意気は、ファーストナンバーCountry Homeに尽きる。もちろん、F*!#In' UpやMansion on the Hill、Over and Overも素晴らしいが、やっぱり冒頭の一発で全てが決まったって感じがする。この曲はその名の通り、何の変哲もないthankful for my country homeを高らかに歌うカントリーロックである。しかし、そこには新しさと古さが渾然一体となった本来的なロックの匂いがある。1990年という時代の端境に迸ったロックの彷徨える魂がある。

70年代後半パンクロックにエールを送り、90年代にはグランジおやじとなる。ニールはいつもヤング・ジェネレーションに自然と寄り添う運命なのだろう。ロックの彷徨える魂。彼は稀代のギターヒーローでもある。

1991年、湾岸戦争が始まり、時代は一挙に暗澹とする。それはロックの世界にも影を落とし、心あるミュージシャンは必然的に時代に囚われていくことになる。彼らのロックの魂は、それ以来ずっと彷徨い続けている。

by onomichi1969 | 2010-02-02 02:06 | 90年代ロック | Trackback | Comments(0)

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