人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

onomichi.exblog.jp

ブログトップ

semスキン用のアイコン01 Electric Light Orchestra "Zoom"(2001) semスキン用のアイコン02

  

2009年 03月 08日

Electric Light Orchestra \"Zoom\"(2001)_a0035172_1322882.jpg90年代以降に洋楽を離れてから、ニューアルバムは殆どノーチェック。最新作として購入するのは、レディオヘッドとブライアン・ウィルソンのアルバムくらいだったろうか。。。いや、もう一人いた。ジェフ・リン。ELOである。エレクトリック・ライト・オーケストラである。
ELOの「楽団ひとり」となったジェフ・リンの最新作は、2001年の”Zoom”まで遡る。”Zoom”は、巷で殆ど話題にもならなかったアルバムであるが、80年代ポップの傑作”Balance of Power”(1986)以来のジェフ=ELOのオリジナルアルバムで、その思いもかけなさも相まって、内容は僕らの密やかな期待を易々と超える素晴らしい出来であった。

ELOは70年代、フル編成のストリングスをロックに取り入れたシンフォニックな音楽性を独自のスタイルとし、ジェフ・リンの「ポップの魔術師」と呼ばれるメロディが融合して、数多くのヒット曲を放った。彼らの70年代の到達点が2枚組大作”Out of the Blue”(1977)であろう。”Out of the Blue”とは、「突然に」地球から離れてということだと思うが、字句どおりに訳せば「青色を超えて」という意味にもなる。

青とは435.8nm の波長もつ可視光領域の7色のひとつであるが、実は、青こそが最後の色、白のその先にある、恒星が最も高い温度で輝く色、波長スペクトル的にも色(紫)の「終わり」なのである。
70年代的なELOのオーケストラ・サウンドは、”Out of the Blue”(1977)で究極の青を超えたのであり、最終曲Wild West Heroの壮大な黄昏の向う側で完結したのだと僕は思う。そして、80年代ポップは”Discovery”(1979)によって始まり、”Balance of Power”(1986)のシンプル化に至る。ジェフの音楽は、オーケストラから最終的にシンプルなギターサウンドに行き着き、その派生として、ジョージ・ハリソンやトム・ペティのアルバムのプロデュース、トラディショナルロックのトラベリング・ウィルベリーズの成功に結び付くのである。

00年代に70年代的なELOを期待することはできない。70年代のELOの音楽は70年代に存在したELOが奏でたものでしかありえないのだから。00年代のELO。その時、僕は期待できたのである。70年代の黄昏の向こうにある00年代の彼らの音楽を。

果たしてELOの”Zoom”(2001)は傑作であった。特に1曲目で1stシングルともなった挨拶代わりのAlrightから、美しいメロディとジェフ・リンの掠れたファルセットが印象的な名曲Moment in Paradiseに繋がる導入部。ジェフ・リンらしいポップセンスが光るJust for LoveやStranger on a Quiet Street、落ち着いたバラード、空の蒼さへの想いIn My Own Timeやシンプルな黄昏Ordinary Dream、ジョージのスライドも聴ける枯れた魅力のA Long Time Gone、ELO風の懐古的ロックンロールMelting in the Sun、70年代風な音の味付けが心地よいLonesome Lullaby、などなど。
”Zoom”(2001)はギターとシンセサウンドによって構成されるが、同じシンセサウンドを特徴とする80年代初期の重厚な音に比べると、隙間としての「スペース」を意識した作りとなっている。特にギターの音と単調なリズムが強調され、やはりこれは00年代の古くて新しい究極の(青の向こう側にある)ELOサウンドと言えるのではないかな。

by onomichi1969 | 2009-03-08 15:19 | 00年代ロック | Trackback | Comments(4)

Commented by むつみ at 2009-03-13 00:54 x
このアルバムが発売された時、正直スゴいアルバムだよなと思いました。
決して7-80年代のELOの音ではない、なのに、どこをどう聴いてもJeff Lynneでしかないサウンド。他の再結成バンドのように、過去を懐かしむ事はしていない。古いファンと初めて彼の音に触れる新しいファン、どちらも満足させるようなまさに2001年のサウンドを聴いた時に、Jeff Lynneの底力を垣間見たような気がします。
ただ・・・、個人的にはELO名義で出す必要があったのか?と思うんですよね。ELO Part2としてBev Bevanに暖簾分けしたような90年代があるのに、Jeff Lynne名義のアルバムじゃあいけなかったのかしら?・・・って。もちろんコマーシャル的には、ELOの方が大きくなるのは分かるんですけども。
Commented by onomichi1969 at 2009-03-14 00:14
むつみさん、こんばんは。
ジェフ・リンはELOの名前に相当拘りがあったのだと思います。我こそはELOなんでしょう。ベヴ・ベヴァンもPart2付でなければELOを名乗れなかったし、今ではムーブの方に固執しているらしいです。その他のメンバーも曲は演奏できてもあくまで元ELOでしかないし。
そのあたりが現在のBBS境遇と同じようでいて、ジェフ・リンとブライアン・ウィルソンの違いなのかもしれませんね。
Commented by TKJ at 2009-05-15 22:22 x
ネットサーチで立ち寄りました。

out of the blueというのは、「出し抜けに」とか「唐突に」とか「思いがけなく」とかいう意味です。私自身、辞書で見つけてびっくりしました。

ところで、今年末にJeff Lynne名義のソロアルバムが出るそうですよ。よろしければお買い求め下さい。
Commented by onomichi1969 at 2009-05-15 23:04
TKJさん、貴重な情報有難うございました。ソロアルバム楽しみにします。

out of the blueというのは「青天の霹靂」ってやつなんですね。知りませんでした。
ということは、青を超えてというよりも、青からやってくるって感じなんでしょうね。それはそれでイメージができるような気がします。
アクセスカウンター