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Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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semスキン用のアイコン01 The Jam "The Gift"(1982) semスキン用のアイコン02

  

2008年 06月 21日

The Jam \"The Gift\"(1982)_a0035172_20405552.jpgジャムは、ロンドンパンクのアイドル的存在で、音楽的にはスピード感溢れるR&B系のビート・サウンド、ファッション的にはモッズという感じで捉えられるのが一般的である。
日本でも70年代パンクのバンドではクラッシュと並び最も人気があり、元々楽曲及び演奏力への評価が高い。ファースト以降も良質なアルバムを発表し続け、パンクからニューウェーブへと移行する時代の流れの中で音楽的な多様性を身に付けることによって、80年代初頭にはUKを代表するバンドに成長する。
そんなバンドの個性は、中心人物のポール・ウェラーの精悍さ、その存在感に結局のところ尽きるのではないか。ジャムにしろ、スタイル・カウンシルにしろ、その音楽から滲み出る「誠実さ」が彼らのサウンドの印象を規定しているとさえ思える。

ジャムの代表作と言えば、3rdアルバム"All Mod Cons"(1978)であろう。力強いベースラインとスピーディなドラミング、激しいカッティングギターと振り絞るようなソウルフルなボーカル。ジャムの特徴的なサウンドにニューウェーブ的なポップセンスが融合し、楽曲的にもアコースティックなバラード"English Rose"の名曲があり、ストレート一辺倒のサウンドからバラエティをみせるようになる。
映画『ハイ・フィデリティ』の中で、当時人気絶頂だったGreen Dayが最も影響を受けたバンドとしてクラッシュとスティッフ・リトル・フィンガーズが挙げられていたが、僕の中ではこの時期のジャムが最もイメージ的に繋がったりもする。今で言うメロコア的なもの。ハードなパンクとメロディアスなポップの要素が最もバランスよく構成されたのがこの時期のアルバムだといえる。

その後、ジャムはポップの割合を徐々に大きくしていき、シングル曲"Going Underground"や"Funeral Pyre"のようなポップソングを次々とUKで大ヒットさせる。さらにR&B的なアレンジやリズムを大胆に取り入れたアルバム"The Gift"(1982)に至り、そのサウンドはひとつの完成形に到達したと言えよう。

僕が一番好きなジャムのアルバムは、やはり"All Mod Cons"(1978)で、高校生の頃に自前で買ったLPとしては、ボウイのジギーやジャニスのパールと共に、アルバムそのものとして最も愛着があった。この3枚を聴くときはつねに厳粛な気持ちで、まるで儀式のようにビニールからレコードを取り出してクリーナーで磨き上げ、ステレオの前で正座して聴いたものだ。そして聴き終わったら厳かにレコードを取り上げ、ビニールに折り目をしっかりと入れてジャケットに戻すのである。(キズなんてつけた日にはもう大変である)

そして、ジャムの中で最も聴いたアルバムとなれば、"The Gift"(1982)になる。
このジャムのラストアルバムは、楽曲的にとても充実していると思う。"Happy Together"、"Ghost"、"Precious"と繋がる導入部のキラーチューンから、中盤の"Running on the Spot"、そして大ヒットした"Town Called Malice"と、とにかく曲が素晴らしい。もちろんブラスを大胆に導入したサウンドアレンジと共に演奏的にもキレの良さを感じる。この時期が人気も最高潮でバンドとしてすごくノリに乗っている状態だったと思うし、だからこそ彼らの解散が如何に衝撃的だったかも想像できる。
このアルバムが彼らにとってのひとつの頂点でありながら、限界でもあったとはよく言われることだ。ポール・ウェラーがスタイル・カウンシルでそのスタイルを180度転換するのも今となってはよく分かるような気がするが、それでも、ジャムとして完成させたギリギリ限界のポップサウンドに僕はすごく惹かれる。それこそが彼らの精一杯の誠実さだと思ったりするのだ。

The Jam \"The Gift\"(1982)_a0035172_20411441.jpg


by onomichi1969 | 2008-06-21 21:15 | 80年代ロック | Trackback | Comments(0)

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