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semスキン用のアイコン01 死ぬまでにしたい10のこと "My Life Without Me" semスキン用のアイコン02

  

2008年 02月 10日

a0035172_13121144.jpgとてもグッとくる映画だった。この映画は一種のファンタジーだと思う。

彼女はまだ23歳の女性だ。17歳で子供ができ、まともな恋愛も経験していない2児の母親である。夫は失業しており、自身は夜勤パート。昼間は寝ていて夕方と朝に夫と子供に触れ合う生活。低所得居住の象徴たるトレーラー暮らし。母親も父親もそれぞれ別々の移民系で、父親は刑務所にいる。ただ、生活に追われながらもそれなりに充足する毎日。それが主人公のバックグラウンドとしての現実である。僕らはその現実を理解できるだろうか? 感情移入できるだろうか? それはそれとして、実はその現実そのものを描くようなシリアスな作品を作るのは案外容易いことだ。しかし、それは当然のことながら製作者の本意ではない。それと同じように彼女の死に至る過程、病状や告知、闘病生活を描くこと(いわゆる難病もの?)も本意ではないと僕は思う。
「私のいない私の生活」それが原題である。さて、私がいなくても私の生活があるのだろうか? それがこの映画のタイトルに込められた作品のテーマではないかな。その時の「私」とは一体誰のことだろうか? この作品の主人公の境遇は上記に述べた通りであるが、何故、彼女が主人公に選ばれたのだろう?

この映画で印象的だったのは最初と最後のモノローグである。
人は死ぬ時にひとりであることを強烈に自覚するに違いない。私がひとりの私であること。孤独。普段、僕らは生活の中でいろいろな関係性を生きている。(それが人間というものだから) しかし、その関係性の中にいる自分という人間、「私」を疎かにしていないだろうか。孤独を感じたくないが故に「私」を見殺しにしていないだろうか。
「死ぬまでにしたい10のこと」というのは印象的なタイトルであるがそれほど重要なことのように僕には思えない。彼女は「私のいない私の生活」を想像し、それを生きる決意をすることにより、「私」を得たのだと思う。その逆説。それはとても辛いことなのだけど、そういった実感こそが、彼女の現実を価値あるものにしたのではないだろうか。

最後に、、、母親役のデボラ・ハリー。存在感がありました。そして、隣人のアン役のレオノール・ワトリング。すごく魅力的な人だと思ったら、『トーク・トゥ・ハー』の彼女だったのですね。ショートカットもよく似合います。2003年カナダ/スペイン映画
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by onomichi1969 | 2008-02-10 13:17 | 海外の映画 | Trackback(1) | Comments(6)

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Tracked from 雨の日の日曜日は・・・ at 2008-02-13 20:40
タイトル : 死ぬまでにしたい10のこと
難病モノは一般に苦手なのだが、この映画は傑作です。 過酷な運命を静かに受け入れる... more
Commented by 晴薫 at 2008-02-13 20:42 x
この映画は良かった。
ペドロ・アルモドバルの力量に感服!
Commented by onomichi1969 at 2008-02-15 00:34
晴薫さん、こんばんわ。
この映画が傑作であることに同感です。主人公は自分の病状を誰にも明かしませんよね。彼女はそういう意味で一人です。孤独です。でも、彼女は一人で在ることを選択することによって、彼女自身が家族を愛する気持ちを確信するのです。なかなかこういう物語は描けないものです。僕も感服しました。
Commented by blues1974jp at 2008-02-17 01:37
すごく観たくなりました・・・・ほんとこの邦題、最近の売れ筋のビジネス書のようで、悪くもないですが、原題の良さとは違うものになっているのですね。゛I can not imagine the world without me!”というエコーベリーの歌詞を思い出しましたが、なんてこのwithout meの使われている意味合いの違うことでしょう。

ところで、『人狼城』読了しました。面白かった! でも、このシリーズ中途のままなんですね・・・結局あのオチに続きがあるのでしょうか。
Commented by onomichi1969 at 2008-02-17 22:34
blues1974さん、こんばんわ。
"the world without me"って普通想像しないですからね。それを受け入れる心情とはどんなものなのだろうって。それだけで気になりますよね!
ついに『人狼城』読了しましたか!ご苦労さまでした。
実は僕も二階堂蘭子シリーズはここまでしか読んでいないのです。『人狼城』でお腹いっぱいになってしまったのかもしれません。。。なのでその後の展開は知らないのです。
Commented by blues1974jp at 2008-02-22 23:31
どうも作者もお腹いっぱいになった!?のか、シリーズ続刊はまだ出てないっぽいですね。あそこまで大風呂敷ひろげちゃうともう・・・
Commented by onomichi1969 at 2008-02-23 02:05
blues1974さん、こんばんわ。
なんといっても世界最長ミステリーですからね。

そうそう、最近、竹本健治のミステリーで、青が究極の色だっていう話を読んで、ふむふむと思い、なんとなくblues1974さんのことを思い出しましたよ。

何で青が究極の色だっていうと、、、星の色と同じなのです。
「星は温度が低いと光をだせずに黒、ある程度熱くなると赤、そのあと温度があがるにつれてオレンジ、黄色と変わり、どんどん白に近づいていく。そしてもっと高温になって、白を通り越してしまうと、星の色は青くなる!どこまでも深い青の世界なのだ!」
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