Electric Light Orchestra "Out of the Blue"(1977) その2
2006年 08月 05日
僕らが歌を聴くという行為も退屈さに嵌ることに違いないのであるが、そんな退屈さの大いなる響きを感じ取れるのがELOの最高傑作"Out of Blue"(1977)だと言えないだろうか。(ちょっと大げさかナ)
このアルバムに「退屈さ」などという主題を感じる人はまぁほとんどいないとは思う。が、僕はやはりこのアルバムの魅力はその大いなる退屈さであり、それこそがシンフォニーであり、人生である(あった!)と感じるのだ。
それをロックミュージックで表現しえた実に幸福な時代の幸福な作品。それがELOの"Out of Blue"(1977)なのだ。
このアルバムの代表曲である03 Sweet Talkin WomanはELOらしいわくわくするような楽しい曲で、そこに僕らが恋をした時に感じる(その昔感じた)ある種のきらめき、あのキラキラとした瞬きを感じることができないだろうか。恋をした瞬間に変わる世界の空気と色彩、そんな感情がこの曲によって蘇ってくるようだ。そして、02 It's Overでの挫折の悲しみや04 Across The Borderでの新たな旅立ちを経て、09 Steppin Outでは人生の岐路とその後の人生が語られ、11 Big Wheelsや13 Mr. Blue Sky、14 Sweet Is The Nightといった名曲が心に染み入る中、最後に17 Wild West Heroでの壮大な黄昏に行き着く。
これは正に人生というシンフォニーである。
古臭さもその場違いな壮大さも、70年代の大きな物語の終焉という時代を僕らに感じさせる。実はELOこそ時代を映す鏡のようなバンドなのだといえる。80年代に入り、ELOはよりミニマルなバンドスタイルを追求していくが、それはシンプリフィケーションを推し進める80年代という時代の必然的な要請であった。時代は大きなシンフォニー、その広がりから小さなマキシム、その深みへの潜行と表層の戯れに二層化していく。さらに90年代、世の中は個闘の時代となり、ELOはジェフリンそのものになるのである。
ELOはロック&ポップ・ミュージックの立役者として、もっともっと評価されるべきだと僕は思っている。僕はELOが好きだ。なんで僕はELOが好きなのか?それはとても文学的な問いで、それはポップとは何か?ということに結びつく。ELOこそが、ポップを体現するが故に80年代という時代のポップを語るに足るバンドなんだナ。実は。
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Electric Light Orchestra "Out of the Blue"(1977)のレビューはこちら!
by onomichi1969 | 2006-08-05 02:59 | 70年代ロック | Trackback | Comments(4)
Jeff Lynnのメロディやアレンジの潔さが好きですね.キャッチーど真ん中のメロディといい,ビートルズそのものといいですね.
ちなみに,私は最初に「Telephone Line」を聴いてそればっかり聴いてた時期がありました.
ジェフ・リンは70年代最大のヒット・メーカーの一人であり、アメリカではポール・マッカートニーやエリック・カルメン、エルトン・ジョンと並び評されるメロディ・メーカーですから。
Telephone lineもいいですね。切なくなります。僕はよくCan't Get It Out of My Head を繰り返し聴いてましたね。最初の頃は。。
数年前にジェフ・リン/ELOの"ZOOM"を買ったら、円盤型のマウスパットが付いてきました!とても嬉しかったw
Mr. Blue Skyもとても人気が高い曲ですね。僕もこのアルバムの後半の流れはとても聴き応えがあって好きです。まさに『果てしなき流れの果て』という感じがします。