Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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semスキン用のアイコン01 最後の誘惑 "The Last Temptaion of Christ" semスキン用のアイコン02

  

2006年 05月 27日

a0035172_2026942.jpg『ダ・ヴィンチ・コード』からの流れでひとつ。

イエスの人間的な側面を描いた映画と言えば、僕はマーチン・スコシージ監督の『最後の誘惑』を思い出す。十字架から逃れたイエスがマグダラのマリアと交わり、ラザロの妹マリアやマルタと生活を共にして多くの子供をもうける。人間的な生活に幸福を見出すイエス。イエスを神と崇めるパウロの演説を罵倒する人間イエス。老いたイエス。この映画は、途中まで、聖書という幻想をリアルに表現するという意味合いにおいて、イエスの人物造詣に多くの人間臭さを滲ませながらも、それでもあくまで聖書の記述を忠実になぞるようにストーリーは進んでいく。しかし、ゴルゴダの丘から場面は急展開し、上記のような新しい解釈、新しいイエスの物語を僕らに提示する。これらのシーンを初めて観たとき、僕は喝采した。僕はキリスト教徒ではないので普段から聖書に接しているわけではないが、学生の頃、ひとつの文学小説として聖書を読んだことがある。ちょうどその頃、三浦綾子の聖書本や遠藤周作の『イエスの生涯』などを読んでいたから、イエスの物語には多少なりとも親しみがあったけど、文学として読む聖書ははっきり言って退屈であった。何度か投げ出しそうになりながら新約の全ての福音書を読んだものである。退屈な聖書をなぞるだけなら、それは退屈な映像的補完にしかならないであろう。それが十字架のシーンから急展開し、人間イエスが神の子イエスを否定するなどという前代未聞のシーンがあるのだから、さすがに『タクシー・ドライバー』や『キング・オブ・コメディ』の監督はすごいことをしてくれる。それらの映画の過激さに痺れていた僕が喝采したのも当然なのである。しかし、最終的に人間イエスは裏切りを装ったイスカリオテのユダによって逆に裏切り者扱いされ、彼を十字架の上から生活という土壌に導いたと思われた天使は悪魔に変わり、イエスが必死に父たる神に許しを請うシーンに至る。長い長い妄想は「最後の誘惑」という悪魔的思念として閉じられ、彼はそれに打ち克つことにより旧来の聖書、そのイエス像は守られるのである。生活という、日常という悪魔。それは結局のところ否定され、作品は閉じられる。。。
このラストシーンに至り、当時の僕は落胆した。この映画は結局のところ、イエスを神の子として担保する以外の何物でもない、そこに大胆な「イエスの生涯」に対する現代的解釈、よりリアルで厳しい宗教感覚というものはなかったのである。しかし、実のところ、当時はそこまでこの映画に対する批判はなく、ポップでロックな映像感覚に僕は作品を充分楽しんだ記憶がある。結構、面白かったのだ。そして時が過ぎ、、、

最近になって、『ダ・ヴィンチ・コード』を読み、その他、歴史ミステリー小説に出てくるような異端審問やその受難の物語などなど、そのことに思いを馳せればこの『最後の誘惑』という作品もまた別の角度から観ることができる。スコシージ監督が、或いはこの作品の原作者が描きたかった新しいイエス像というものは正にあの妄想としての「最後の誘惑」の物語にこそあったのではないかと。確かに最後にそれは否定されるのであるが、それはあくまで隠れ蓑であり、やはり彼らが最も描きたかったのは神の子イエスを批判する人間イエスの物語であって、宗教というものが必ず躓かざるを得ない生活というもの、その悪魔を生み出す欲望への飽くなき信、それが人間として肯定すべき現実である以上に、人間を人間たらしめるココロそのものである、そういうことではなかったか。
『最後の誘惑』から15年以上が過ぎ、『ダ・ヴィンチ・コード』が全世界の4000万人に読まれる現代になって初めて、この作品の本当の意義が眩い朝の光のようにベールの隙間からこぼれ出ているような気がする。マグダラのマリアがイエスの子供を宿しながら、神によって死へと召される、あの短いシーンの中にこの作品を別の解釈へ導く象徴的な意図が隠されていたのかもしれない。。。1988年アメリカ映画

みんなのシネマレビュー 『最後の誘惑』
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by onomichi1969 | 2006-05-27 20:27 | 海外の映画 | Trackback(1) | Comments(0)

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