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Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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semスキン用のアイコン01 プレッジ "The Pledge" semスキン用のアイコン02

  

2006年 05月 13日

プレッジ \"The Pledge\"_a0035172_1256297.jpgとても怖い映画だった。この映画のニコルソンをどう捉えたらいいだろうか。彼にとってのプレッジとは一体何だったのだろうか。
ショーン・ペンの前2作品を認めている身としては、彼が単なる凡庸なサスペンスを撮るような人間ではないという確信はあったし、実際そういうサスペンスのみの視点でこの作品を観るべきではないのだと思う。

この作品に通底する孤独な男の信念が徐々にその箍(たが)を狂わされていく様子は正直言って恐ろしく、それが事件と素直に繋がっていかないところが逆に評価できると僕は思っている。それを「長いネタふりのコント」だと言う辛辣な意見も見かけたが、そもそも人生とはオチのつかない枝葉なエピソードのつづきであって、傍目には全く面白みのない孤独な一人芝居を知らず知らずに演じているものなのだ。まぁそれはもう自明なことであって、僕らがそこに求めるのはその中で失われつつあるものをどう汲み取っていくかということなのだろう。

この作品は、冒頭から刑事を引退した後のニコルソンの一挙一動を克明に記していく。彼は、刑事としての本能と執念によって事件を執拗に追いかけているように見える。そして僕も映画中盤までは、その信念こそ彼が少女のイノセンスを守る孤独なキャッチャーであるというところから来ている、そういう物語なのだと思っていたのだ。<彼の語られない境遇は重要だ> ところが、、、徐々に何かが狂っていくのである。それは体の中に巣食う癌のように確実に何かを蝕んでいくのである。そんなニコルソンの微細な変化と抑えきれない狂気が垣間見える場面の恐ろしさ。彼の「イノセンスのキャッチャー」という立場は、その絶対的不可能性の罠に確実に閉じ込められていくのである。この作品のテーマはずばり「イノセンスのキャッチャー」の行く末だと思う。ニコルソンは年老いて歪んだホールデン少年の行く末なのだ。彼がプレッジとして信奉したもの、全てのイノセンスを守ることの不可能性は、容易に自らを矛盾の孤独に押し込め、どこでもない場所へ導く。なんというリアリティだろうか。
この作品のエピローグは冒頭のシーンへと繋がっているが、そこにはウロボロスの如き出口のない絶望が横たわるのみである。前作で描いた希望の光のようなものはそこには見出せない。この地平からショーン・ペンが如何にして物語を紡いでいくのか、それは次作に期待するとしよう。2001年アメリカ映画(2004-05-02)

みんなのシネマレビュー 『プレッジ』

by onomichi1969 | 2006-05-13 12:58 | 海外の映画 | Trackback(1) | Comments(2)

Tracked from 注目すべき人々との出会い at 2006-06-01 00:12
タイトル : プレッジ
監督がショーン・ペン、主演がジャック・ニコルソン、また他の出演者も曲者ぞろいですね・・・。 「アンデルセンの童話」が主軸に、最近のサイコサスペンス風に話は進んでいきます・・・。 原作はフリードリッヒ・デュレンマット(スイス生まれ)という作家でドイツ語の作品... more
Commented by lomo at 2006-06-01 00:26 x
こんちには、はじめまして。
私は始めて観た【ショーン・ペン】監督の作品が、この『プレッジ』でした。
なかなか「深い」内容で感動した作品です・・・。
僭越ながら「TB」送りました。これから宜しく御願い致します。
Commented by onomichi1969 at 2006-06-01 00:56
こんばんわ。はじめまして。
『インディアン・ランナー』に衝撃を受け、以来、ショーン・ペンの作品は『クロッシング・ガード』、『プレッジ』と観続けていますが、これらの作品を通して、彼がひとつの「遠き道の途中」で足掻き、もがいている様子が透けて見えてきます。しかし、彼は確実に細い一筋の光を辿っている、そのような感触を僕は感じることができます。だから彼の作品はこれからも観続けるでしょう。おそらく。
ということで、こちらこそ宜しくお願いしま~す。
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