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Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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semスキン用のアイコン01 Roxy Music "Avalon"(1982) semスキン用のアイコン02

  

2005年 10月 01日

Roxy Music \"Avalon\"(1982)_a0035172_23131724.jpg"Avalon"(1982)こそがロキシーの音楽的終焉であり、最高傑作であることに誰も異論はないだろう。
彼らがバンドの音楽的歴史の極みとして、これまで築いてきた方向性の彼方、その頂点を目指してこの作品をつくりあげたことは想像に難くない。そう考えれば、彼らが"Avalon"によって音楽的終焉という達成感を得て、それを最後に解散したことは至極当然のことであったと思える。作品の達成感は彼らに先行きの放棄、もうこれ以上は進むことができないという音楽的無力感をもたらしたはずだ。達成感から無力感へ。人が「終わり」を宣言する時に現われる地平、それは"Avalon"という達成感の中に「不安」というイメージ的要素として見出すことができるかもしれない。

僕はロキシーの行き方、そして"Avalon"という作品への到達にこそ音楽的形而上性の顕現を見る。しかし、敢えてこうも言ってみたいと思う。僕らはもう進歩の終焉こそが究極であるという考え方に肯くことはできないのだと。そこに一直線に繋がる理性の道、それに向かって疑いなく進んだ先に見出したものは、それを掴んだ瞬間に零れ落ちるべきものなのだ。到達の極みにあるのは煌びやかな評価や解釈のみであって、そこに究極の何かがあるというようなロマンティシズムは幻想なのである。それはヨーロッパの形而上学が崩壊した今となっては既に自明のことだと言わざるを得ない。

ロキシーが"Avalon"を完成させた後に得た達成感は、その作品の質に比例してかなり充実したものであったろう。しかし、それは時間と共に無力化していくのだ。それは時代精神が無化したのと同じように、作品の質とは全く別のところで彼らを絡め取る無精神の罠となり得るのである。

さて、"Avalon"というアルバムの素晴らしさ、ロキシーが目指した絶妙なる非線形の美については、これまで何度か言及してきたので改めてここで語るべくもない。前作"Flesh + Blood"(1980)の流れを着実に受け継ぎ、さらに彼らの音楽性を最高点まで昇華したアルバム、それが"Avalon"(1982)なのである。
アルバムの冒頭01 More Than Thisからラスト10 Taraまで、その構成、楽曲の質、フェリーのボーカル、演奏、アレンジと統一感、どれをとっても完璧を目指された究極のアルバムである。
上で書いたように、それは確かに幻想にすぎない。そもそもロマンとは幻想そのものなのだ。僕はこのアルバムを幻想として、それも最上級の幻想として聴くことができる。その高揚と恍惚、そして無力感を漂わせる不安。それはこのアルバムから必然的に流れるメロディなのかもしれない。完璧なロマンチシズムは脆く、それ故に美しい。

今、僕らはRoxy Musicの "Avalon"がそのジャケット写真のオブジェと同様に切りたった崖の上に聳え立つのを見る。その立ち姿から漂う孤高性と不安感。着実に上ってきた道程とは対照的に、その先にもう道はない。その後のフェリーの歩み。フェリーと同様に、実は僕らもこの時代から先の道を失っている。しかし、彼らのように自覚的でないからこそ、僕らはただ"Avalon"というアルバムに「究極性」というノスタルジーを見出さずにはいられないのだ。

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Roxy Music "Roxy Music"(1972)のレビューはこちら!
Roxy Music "Siren"(1975)のレビューはこちら!
Roxy Music "Manifesto"(1979)のレビューはこちら!

by onomichi1969 | 2005-10-01 23:30 | 80年代ロック | Trackback | Comments(6)

Commented by ルナ☆ at 2005-10-03 12:14 x
onomichiさん、こんにちは♪

やっぱりonomichiさんのレビューって凄すぎる・・・!どうしてそんなに凄いの?って思っちゃう☆
読ませていただいてまた聴いてみたのですが、ルナ☆はAvalonを聴いていると透き通った緑色のイメージが広がります。Taraで波の音がするというのもあるのだけれど、何となくアルバム全体がアクアリウムでゆらゆらしている感じで、気持ちの良い音なんですよね。なんともいえない幸福感を感じます。そういえば今年極度の夏バテでグッタリしていた時、Avalonを聴いたら頭がすっきりして気分よくなったんですよ♪
とにかく色々な意味で完璧なアルバムであることは間違いないですよね☆

☆「春の雪」楽しみですね♪今月末?なんだかドキドキしてきました(笑)
Commented by onomichi1969 at 2005-10-04 23:30
ルナ☆さま、こんばんわ。
言葉の塊を思いっきり投げつける感じでしょうか。マサカリ投法ですw
ストライクとはいかずに大暴投ばかりですが、とりあえず受け取ってもらえて嬉しいです。
<結構楽しく書いておりますが。。;>

Avalonで清涼効果ですかぁ。
ルナさん☆にはロキシーの曲がよっぽど合うんですね。
ウキウキしたり、ゆらゆらしたり。
さすがです。。。

★映画版の「春の雪」ですか。。映画化を熱望した身としては、待ちに待った公開ですが、、どうなんでしょうね。あのシーンの出来具合は。。
まぁ何はともあれ、僕も楽しみです。
今のところ観たい映画No.1かな。
Commented by ルナ☆ at 2005-10-09 02:51 x
onomichiさん、こんにちは♪♪

リニューアルされたんですね!
(あっ…ちょうちょがいない…あれはまぼろし??笑)

ところで「あのシーン」ってあのシーンですよね?(笑)
ずうっと前に書かれていた雪見+花見のシーン。ルナ☆もすごく気になってます☆あと、お別れのシーンですね。学生時代に読んであの時の聡子さんの台詞で3回位号泣(TT)したので、竹内結子さんにはとても期待してます!もちろん妻夫木君もね♪

Country LifeはAvalonと同じくらい好きなアルバムです☆
Thrill of it allとかReally good time,Prairie roseが好き。でも改めて見てみるとロキシーはジャケットのインパクトも凄いですね♪(特にCountry Lifeが。。)
Commented by onomichi1969 at 2005-10-09 09:45
ルナ☆さま、おはようございます。

少しリニューアルしました。出来る範囲で小技をいろいろと入れております。。。(一応、こちらがオリジナル・スキンで、、、ちょうちょは、束の間のまぼろし、、、ということでw)

「あのシーン」と言えば「あのシーン」ですw
特に雪見のシーンでしょうね。「恋の成就」を顕現するとても美しい場面です。あのシーンを読んで、僕は初めて恋の美しさを知ったのでした。
僕は聡子さんの最後の最後の台詞(『天人五衰』)にいまでも取り付かれてますよ。まぁこの映画ではここまで行かないと思いますけどw

インパクトありますよね。
知らない人が観たら、なんだこのエロサイトは!って思うかも。紙一重だ。。
最近、ロキシーをよく聴いてますが、"Manifesto"(1979)もなかなかだと思いましたね。My Little GirlからDance Awayの流れ、、、これを聴くと僕も外に出かけたくなります。

Commented by ルナ☆ at 2005-10-11 12:45 x
onomichiさま♪こんにちは。

>聡子さんの最後の最後の台詞(『天人五衰』)にいまでも取り付かれて
本当にそうですね。私もあの最後の台詞は衝撃でした。いまだに戦慄を覚えます。しかもあの最終場面が三島自身の死と直結しているのか?と思うと、私も霧の中を彷徨うような感覚になってしまいます。でも上手く言えないけれど、私はあの最終場面が好きです。
onomichiさん、今度ぜひ『豊饒の海』についても書いて下さい!お話していたら久しぶりにまた読みたくなってしまいました。

>ロキシー
そうなの外に出かけたくなるの(笑)何故でしょうね?
Flesh&BloodのMy only love、AvalonのTrue to life、Boys and girlsのSlave to loveがルナ☆の好きな曲best3かな♪
Dance awayも好きです♪
Commented by onomichi1969 at 2005-10-12 00:36
ルナ☆さま、こんばんわ。

ルナ☆さん、調子に乗ってとんでもないリクエストをしていますよw
『豊饒の海』についてちゃんと語ることができたら、僕はもう他に何も書くことができないでしょう。なんて、うかつに「終わり」を宣言してしまいそうだ。。。
まぁ、三島由紀夫についてはそのうちに何か書けたらなぁとは思います。

そうそう、ルナ☆さんのバリバリ☆ロックレビューも期待していますよw

。。。フェリーのソロは聴いてなかったナ。ラジオとかで "Don't Stop The Dance" がよく流れていたのは覚えてるけど、、、今度聴いてみますね。
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