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Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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semスキン用のアイコン01 Roxy Music “Roxy Music”(1972) semスキン用のアイコン02

  

2005年 08月 28日

Roxy Music “Roxy Music”(1972)_a0035172_15182821.jpgロキシー・ミュージックの最高作といえば、”Avalon”(1982)である。ユーロ・ロマンティシズムの極致でありながら、それは非線形の美とも言うべきオリエンタルな味わいを濃密に感じさせる。研ぎ澄まされた音の配列、そこから溢れ出る情感、その揺らぎの表現は見事という他ない。
考えてみれば、ロキシーほど真っ直ぐに変化し続けたバンドというのもないであろう。(彼らのLPジャケットが1作毎に洗練されていくのと同じだ)もちろん彼らの目指した高みが”Avalon”という美なのだが、そんなロックの終焉とも言うべき傑作を前にしてしまうと、彼らのデビュー作“Roxy Music”(1972)の何と青々しいことか。
ブライアン・フェリーといえば、その優雅な佇まいと甘く華麗な歌声が印象的であるが、このころにはそんなアダルトな味わいも薄く、ただただ神経症的で猥雑な感じである。アンディ・マッケイのサックスも妙に不安定だし、マンザネラのギターは聴こえたと思えばひたすらノイジーである。彼らが音楽を知らないロックバンドであると言われたのもよく分かるような気がする。
ロキシーは”Avalon”によって不定形の定型ともいうべきスタイルを完成させるが、このデビュー作での彼らは未だ単純なる不定形、ゲル状の非晶質のままである。但し、ある種の意志、それは彼ら独自の非音楽的定型に囚われない音の追求で、それが装飾というものを次々と剥ぎ取っていくことであり、そこに現われる音たちの不定形の定型化という意志だけは、その後の歩みの中にはっきりと示されるのである。
初期2作をもって、ブライアン・イーノはロキシーを脱退することになるが、それも当然の成り行きだったのだろうと今では思う。つまりイーノこそがまずは剥ぎ取られなければならなかった装飾ということか。

さて、“Roxy Music”(1972)に戻る。
このデビュー作はロキシーの原点であり、原石である。それは除々に磨かれていくわけだが、原石故のざらつき感(という面白み)、失われ去るを得ない別種の味わいもここには確かに存在する。ある意味でそれがこのアルバムの魅力と言えるだろう。
01 Re-Make-Re-Modelや08 Would You Believe-の猥雑さ、03 If There Is Somethingや09 Sea Breezesの軽薄さ、などがそれである。
ひとつのバンドの歴史を考えるとき、ロキシー・ミュージックの歩みこそは、時を刻むことの重みというのを僕らに教えてくれる。もちろんそれを確かめるためだけにこのファーストアルバムは存在するわけではない。が、しかし、デビッド・ボウイの”Hunky Dory”を語るようにはロキシーのファーストアルバム“Roxy Music”を語ることはできない。やはり語るべきは”Avalon”への到達ということになるのだろう。

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Roxy Music "Siren"(1975)のレビューはこちら!
Roxy Music "Manifesto"(1979)のレビューはこちら!
Roxy Music "Avalon"(1982)のレビューはこちら!

by onomichi1969 | 2005-08-28 15:29 | 70年代ロック | Trackback(1) | Comments(6)

Tracked from 布袋寅泰とその他音楽と日常 at 2006-07-20 01:38
タイトル : ROXY MUSIC『FOR YOUR PLEASURE』
For Your Pleasure ROXY MUSICというバンドの実体やその音楽性について説明するのは難しい。 ロック、ソウル、プログレ、サイケ、アヴァンギャルド、現代音楽.....など、 様々な要素をミクスチャー感覚で吸収して消化するセンスは極めて個性的で、 ヴァラエティ且つユニークな音楽性故に聴き手の好き嫌いは大きく別れます。 特にブライアン・イーノ在籍時の初期はその音楽性が非常に顕著なのですが、 その混沌とした前衛的ロックンロール芸術の魅力は実に捨て難いです。 この『F...... more
Commented by 夏バテ中のルナ☆ at 2005-08-31 22:01 x
onomichiさん、こんにちは♪
ごぶさたしております。お元気ですか?
ロキシーが好きなルナ☆です。「アヴァロン」「サイレン」「カントリーライフ」などよく聴きました。初期はギラギラしていて、きわどいセンスで面白いですね。イーノの不協和音な音がいいです。
なんとなくロキシーを聴いていると、じっとしていられなくなるというか、遊びに出かけたくなるというか(?)そんな感じです。
「AVALON」についてももっと語って下さい!楽しみにしてます♪
Commented by onomichi1969 at 2005-08-31 22:54
ルナ☆さん、久しぶりです。
残暑が厳しい今日この頃ですが、、、元気ですかーーー

僕はなんとか元気です。

ピンクフロイドに続き、ロキシーで来ましたね。

>じっとしていられなくなるというか、遊びに出かけたくなるというか

その気持ち、なんとなく分かります!と言いたいところですが、やっぱりよく分からんナ。。。街に出たくなるってことなのかな??

"Avalon"については、近日レビュー公開予定です!(近日がいつかとは言えませんが。。。) 思い浮かぶのはレトリックばかりで、あのアルバムの本質には到底迫れないでしょうけど。

ルナ☆さんは音楽レビューとか書かないのでしょうか??
クラッシックやバレエにも造詣が深くていらっしゃるし、映画だけじゃなくって、他のジャンルでも、情熱的かつ理知的なルナ☆さんの文章を読んでみたいですね。
Commented by ルナ☆ at 2005-09-01 13:08 x
onomichiさん♪

>街に出たくなるってこと
そうです夜遊びです☆(←冗談ですけど。笑)

onomichiさんのレビューは、いつもその映画や音楽の本質に迫っていると思います。これはなかなかできることじゃないと思うので、とても信頼できるし、繰り返し読みたくなります。文章そのものも素晴らしいし…憧れてしまいます。

音楽レビュー、書いてみたいですねー。音楽は私の生きる道!情熱だけは有り余る程あるので、バレエなども含めてその内、と思ってますけど。。どうなることやら?
とりあえず今は「ルナ☆の好きな映画100」を書きたいと思ってます!
onomichiさんに褒められて嬉しいルナ☆でした♪

ちなみにロキシーで一番好きな曲は「Avalon」の「True To Life」です♪
Commented by onomichi1969 at 2005-09-02 00:28
ルナ☆さん、

>音楽は私の生きる道!

素晴らしい言葉ですね。レビュー期待して待ってます。
そして、とりあえずの「ルナ☆の好きな映画100」も楽しみにしてます。(これは「みんなのシネマレビュー」のことなのかな。。)

ちなみにロキシーで一番好きな曲は、、、"Tara"でしょうか。もちろん、"Ture To Life"もカッコいい曲ですね。
Commented by hyuma at 2005-09-25 09:52 x
コメントありがとうございました。ロキシーのAvalonは完成度が高すぎて、今は初期の荒々しさが好きです。かつ、フェリーのナイスなおじさんイメージがAvalon以降定着してるのが何かいやなのです。(笑)でも、一時かなり聞いていたアルバムなのでレビュー楽しみです。ELOも実は大好きで、私の場合はやっぱりOut of Blueが好きで、当時はアナログなので、紙の組み立て円盤のおまけが入っていました!!
Commented by onomichi1969 at 2005-09-25 15:33
hyuma様、こんにちわ。
ELOの組み立て円盤のおまけ!いいですねぇ。
僕はアナログでDiscoveryを(今でも)持ってますが、おまけがないのでとても羨ましいです。。

"Avalon"をかなり持ち上げてきましたので、これをどう落とすか思案中ですw
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