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Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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semスキン用のアイコン01 シカゴ "Chicago" semスキン用のアイコン02

  

2005年 05月 02日

シカゴ \"Chicago\"_a0035172_168137.jpgとても面白い映画だと思う。しかし、世間にはこういう映画を素直に楽しめない心情が存在するようだ。一体それはどういうことなのだろう? 

歌と踊りによって出演者達が自らの心情を躍動感と共に語る構成というのが、ミュージカル映画の手法である。しかし、このスタイルに馴染まない人もいる。(かく言う僕もその一人。。) 「ミュージカルはちょっと、、、」と、この映画に関しては単純に言ってはいけない。この映画は、突如として出演者が歌い、踊りだすというミュージカル的な不自然さを映画的に捉え直すことこそがテーマなのだから。
『シカゴ』では、心情の吐露や妄想や夢をミュージカル的に再構築し、その感情のディテールを描き出すことに重点を置いている。つまり、歌と踊りが感情の本質でもあり装飾を表現するのだ。ミュージカルシーンは映画の中にパッチワークのように展開されているが、それは現実の展開を決して阻害せず、その境界は明確で違和感がない。ある意味でその境界の明確な区切りは、心情と現実、本音と建前、内と外の区分であり、映画としては場面の2重性を指し示す。(つまり、場面展開の区分が明確であるが故に、突如として歌い、踊りだすというミュージカル的な不自然さをあまり感じないということだ。)
しかし、『シカゴ』の手法は、この明確な区分けが実は明確でないということを最終的には明確に僕らへ伝える、そのことが重要なのである。(それについては後述。)

ストーリーは陳腐である。僕はこの陳腐さ、オール・ザット・ジャズなストーリーこそがこの映画の手法を見事に生かしていると感じる。何故か? 2時間サスペンス調の陳腐なストーリーにもその単純さ故の人間的な深み、日常/非日常という揺らぎというものがあるはずなのであるが、通常、それは滑るようなストーリー展開の中で隠されている。しかし、この映画はそこに隠されているであろう様々な感情や状況の「断絶線」にフォーカスし、それをミュージカル的に(歌と踊りというが感情の本質でもあり装飾であるということをもって)明らかにしようとしているのである。

この映画の「映画的」たる所以は何か? この作品は、ミュージカルの映画版であるが、単純にミュージカルそのものと比較するという話にはならない。というか、映画となった場合、それは別物にしか成り得ない、というのが僕の考えである。大体、この映画はそんな歌と踊りの再現という従来のミュージカル的次元を超えることを目的として作られている。

最初に戻る。この映画は、現実とミュージカルシーンとの2重性により展開していくが、最終的に、その2つの展開を別々に捉えては理解できない部分が見えてくる。ミュージカルシーンでの心情の吐露や妄想が全くの装飾であり、嘘ではないか?と感じさせるシーンもあり、ミュージカルシーンのリアリティそのものが宙吊りされるような感覚に襲われるのである。しかし、この映画が図らずも表現し得たのは、実は現実とミュージカルシーンとの2重性、この2つ展開の擦れから地下水のように滲み出てきたある種の違和感、その断絶線から沸き出でる本質的な感情なのである。
最後の裁判シーンで、リチャード・ギア演じる弁護士がロキシーの日記についての弁明を行う。その際、彼はずっとタップを踊り続けている。彼はステップを刻み続けるが、それは、何というか、彼にとっての脅迫観念のようなものだったと僕は思う。『とにかく踊り続けるんだ。。。』 そういう声が彼の最も深いところから聞こえているということが、場面の擦れから、その断絶線から僕らに伝えられる。この映画がミュージカルというエンターテイメント性からハッキリと零れ落ちた場面である。(その後、ギアに言い訳を言わせるが。。)

結局のところ、この映画は、ミュージカルシーンによって心情と現実という区分を明確化するのだが、実際はそれによって明確化され得ないもの、2つ場面展開の擦れや捩れを克明に捉えることである種の表現を達成し得たのではないだろうか。その方法論こそ、これからの映画が目指すべきひとつの方向性ではないかとさえ僕は思う。

最後に、、、キャサリン・ゼタ=ジョーンズの迫力ある歌声と踊りは素晴らしかったが、やっぱりレニー・ゼルウィガーの存在感もすごいナ。そういう愛すべき映画でもある。まぁ当然のことながら。。2002年アメリカ映画

『シカゴ』-goo映画-

by onomichi1969 | 2005-05-02 13:14 | 海外の映画 | Trackback(1) | Comments(2)

Tracked from 利用価値のない日々の雑学 at 2005-05-20 19:35
タイトル : シカゴ ~My Collection~
筆者は音楽評論家ではないし、増してや多少演奏は出来るものの音楽家ではないので詳しいことは良くわからないが、そもそもミュージカルの発祥って何なのだろう? ネット検索や専門書も読んでみたが今ひとつピンと来ないのが実感である。歌という点ではオペラがあり、舞踊という点では(無論、オペラに舞踊も含まれるが)バレエが上げらる。ただ、音楽芸術の世界というのは、舞台に比べると、女性が舞台に上ることに肝要だったと言える。その伝統を残すのもは、わが国の「歌舞伎」くらいになったが、以前は舞台は男性だけのものであつたことは周...... more
Commented by roadman1971 at 2005-05-02 21:03
onomichiさんがchicagoを見ること自体が???結果は見えてますって(笑)といいつつ最後のキャサリンとレニーへの言葉が気になるところです。

閑話休題、本日HMVで購入してまいりました。
『LAST WALTZ』
『スパニッシュアパートメント』
『ブルースブラザーズ2000』
3本買って税込み2881円。こんなに安くていいのでしょうか。
Commented by onomichi1969 at 2005-05-02 22:59
roadman1971さん、
DVD安すぎですねー。『ラストワルツ』も3年前は3本分の値段だったような。。。
このままいったら、新作以外の再販モノは全て1000円を切ることになりそうだ。(まぁ安いことはいいことだけど)

『シカゴ』は、結局のところ、、、踊りと歌が楽しい映画、ということですw

そういえば、"that things you do"観ましたよ。歌がよかったですねー。(これも安売りで980円だった。。。@ジャンボエンチョー)
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