Boz Scaggs "Down Two Then Left"(1977)
2013年 07月 25日
ボズの作品の中では、彼の声が最も艶っぽく、高音で押し捲る、ファルセットに気合すら感じられる。特に代表曲"Hard Times"の声がすごすぎる。この時期だからこその若さと円熟味が混じりあった彼独特の声の艶がある。1曲目の"Still Falling for You"、続く"A Clue"や"Whatcha Gonna Tell Your Man"、"Hollywood"、"Then She Walked Away"も同様に素晴らしい。いつもよりも声に伸びがあって、よっぽど喉の調子が良かったのではないかな。ラストのバラード"Tomorrow Never Came"の声もよく響く。
若きTOTOの面々の演奏もよい。鉄壁のリズム感、力強さと繊細さを併せ持ったポーカロのドラム。弾けつつ、抑える。明快で滑らかなルカサーのソロ。レイパーカーの軽やかなカッティングと対比しつつ。彼らの年齢とキャリアと70年代後半という時代、ボズとのコラボ、この時期だからこその演奏の味わいがある。
"Silk Degrees"にも残っていた泥臭さを完全に洗練に変えた。ボズにとって完全たるAdult Contemporaryの出発点であり、且つ代表作とも言える。次作"Middle Man"(1980)以降は円熟の域に入っていくので、このアルバムこそが彼のキャリアのひとつのピークだったのだと僕は思う。
ボズのアルバムは初期作も素晴らしく、僕はこれまでどちらかと言えば、デビュー作"Boz Scaggs"(1969)や"My Time"(1972)が好きだったのだけど、”Hard Times”や”Hollywood”の力強く、且つ洗練された歌と演奏を聴くたびに、この時期のボズが一番輝いていたんじゃないかと思えなくもない。
by onomichi1969 | 2013-07-25 20:42 | 70年代ロック | Trackback | Comments(0)