The Rolling Stones ”It's Only Rock and Roll”(1974)
2005年 03月 20日
彼らのアルバムの中からベスト1枚を選ぶことは、不可能である。ストーンズのサウンドは、昔から一貫しているように思われがちだが、それはミックのボーカルスタイルによるところが大きく、サウンド自体は時代とともに変遷しているように僕は思う。実際、時代の音楽を巧みに取り込むことは彼らの最も得意とするところなのだ。
彼らのアルバムを時期的に分けるとすれば、リードギタリストがブライアン・ジョーンズの時代、ミック・テイラーの時代、ロニー・ウッドの時代。。。というようになるだろうか。しかし、単純にリードギタリストの違いだけで時期を分けるのは乱暴すぎるのも事実で、60年代後半はブライアンが完全に不能であった時期もあるし、僕も大好きなアルバムである”Black & Blue”(1976)などは、ギタリスト・セレクションと呼ばれたレコーディングがそのままアルバムとなったような作品で、ロニーがメインでギターを担当している曲は1曲しかない。(”Black & Blue”(1976)は、ストーンズのアルバムの中でも特異な印象を与えるクロスオーバー的な作品だ。ちなみにこのアルバムでは元キャンドヒートのハーヴィ・マンデルのギターが素晴らしい。もちろんビリー・プレストンの楽曲と演奏がこのアルバムの印象を決定付けていることもある。) メンバーチェンジの派境期には、多くのサポートメンバーが参加するので、そこにはリードギタリストに依らないが故の名演があり、その多くは名盤である。とはいえ、やはりストーンズにとってのリードギタリストの違いは、時代時代における彼らの色の違いを象徴するものであることも確かだろう。
ということで、ストーンズのアルバムについては、今後気が向いたら適当にピックアップしながら紹介していくことにするが、今回は、ミック・テイラー時代の傑作であり、実際、彼のギターがその本領を発揮したアルバムでもある”It's Only Rock and Roll”(1974) を取り上げてみる。
このアルバムの特徴としては、表題曲である”03 It's Only Rock and Roll”が代表曲として捉えられることが多いが、僕としては、やはりミック・テイラーのギターが象徴的な”05 Time Waits for No One”や”08 If You Really Want to Be My Friend”、”09 Short and Curlies”、”01 If You Can't Rock Me”などがこのアルバムの印象を決定付けているのではないかと思っている。(実際、”03 It's Only Rock and Roll”などはその後のメンバーとなるロニーの作品であるとも言われている。)
ミック・テイラーは、元々ジョンメイオール学校の優等生で、音楽的には知識、演奏テクニックにおいて、当時のストーンズの中ではずば抜けた才能に恵まれており、ストーンズの70年代初期の音楽性、ブルースロックというかスワンプロック的な味わいに大きな影響を与えたと言われる。ストーンズのオリジナル作品はすべてミック&キース名義となる為、なかなかその作品のオリジンが見えにくいけれど、ミック・テイラーの音楽性は、スチュやサポートメンバーであったレオン・ラッセル、ドクター・ジョン、(ライ・クーダーやアル・クーパーも挙げたいが)などと共にこの時代のストーンズサウンドに大きな献上をしているはずなのである。
ミック・テイラーの作品の特徴は、その流暢なギターワークにある。アルバム”It's Only Rock and Roll”(1974)で言えば、先ほど言及した”05 Time Waits for No One” が最も象徴的だろう。僕はこの曲を最初に聴いた時、ある意味でストーンズ的ではない(キース的リフ感覚に乏しい?)ギターサウンド、演歌のような単音フレーズにある種の違和感を抱いたものだ。しかし、それもまたミックのメインボーカルとキースのコーラスが被さることによってストーンズになる。そして、これらが数あるストーンズサウンドの中でもこの時代を象徴した忘れじの名曲だと、今では思うのである。
ミック・テイラーはこのアルバムを最後に脱退する。その理由は未だに明確に言明されていないようであるが、”Sticky Fingers”(1971)から”Goats Head Soup”(1973)を経て、明らかにミック・テイラーがフロントに立ったこのアルバムがキースの影を薄くしているのもまた確かなのである。はっきり言えば、キースはミック・テイラーを含め、70年代初期のアルバムに多く参加したサポートメンバーから多くのもの、音楽的素養を学んだはずだ。そして彼の趣味でもあるクロスオーバー的な味わいのある” Black & Blue”(1976)を経て、「似たもの」ロニー・ウッドを最愛のパートナーとして(懇願して)選択し、現在のストーンズサウンドの原型ともいえるツインリード&サイドギタースタイルが特徴的な”Some Girls”(1978)を生み出す。キースがロニーを選んだこと、それがストーンズにとって正解だったことは、今では誰もが納得するだろう。
ミック・テイラーはその端整な容貌、優れたギターテクニックと音楽性によってストーンズのメンバーとなったが、ある意味でこのアルバムで完成され、その後変遷していくストーンズサウンドにとってはもう不要の存在だったと言えるのではないか。その大人しい性格もミック・ジャガーとキースの間に入るにはキツかった、、、と言われる。(ミック・テイラーの側から見れば、音楽的にも、もうストーンズの枠に収まりきれなかったとも言える。) その後加入するロニーこそ、ストーンズのイメージによりフィットしたし、メンバー間のバランスをとるためにも最適だったのだろう。
まぁとにかく、ミック・テイラーが活躍する”Goats Head Soup”(1973)や”It's Only Rock and Roll”(1974)は僕の大好きなアルバムである。そして、ストーンズサウンドのひとつの完成型として、この時代を象徴するアルバムなのである。
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The Rolling Stones "Still Life"(1982)のレビューはこちら!
by onomichi1969 | 2005-03-20 02:39 | 70年代ロック | Trackback | Comments(6)
このCDの「豪華絢爛ロック絵巻」(←大奥みたいな表現すまんです)みたいな
ジャケットが、大好き。ボウイの「ダイヤモンドの犬」のイラストレーターの作品。
「Time Waits For No One」の無常感、「快楽の奴隷」の、脳天気さが、たまらんです。
・・・ブライアンといい、ミック・テイラーといい、脱退メンバーはイケメン~(´∇`)
人生いろいろ、お加減はいかがでしょうか?
僕が思うイケメン・ギタリストのベスト3は、、、
ミック・テイラー
ダニー・カーワン
ピーター・フランプトン
、、、かなぁ。。
何回も、死にかけてた私が、生き延びているのが不思議なくらいです。
「悪い夢を見てるみたいだ・・」といって、泣き崩れていた、Nさんのご両親。
「がんばって下さい」って言葉しか見つからなかったなぁ(情けね-、自分)
Nさんは、動物関係の仕事をしていたので、道を歩いている犬や猫をみてるだけで
泣きそうになる私だった・・( ´Д⊂
teacherteacherさんのレビューを読んで何となく理解してましたけど、病気ではいろいろと苦労されたのですね。人生いろいろ、人生奇遇、そんでもって、やっぱり生きているってことは運命なんじゃないのかな、と最近思ったりします。。。
相変わらず無駄な前フリが長い文章でした;;
僕もようやく王道について書いてみようかなぁと。。。といいつつ、このアルバムを選択してしまうところが、まだマイナーかなと。まだまだイチゴは取ってありますw
「It's only rock n' roll」のシングル盤があるのですか。あれば貴重ですねぇ。