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semスキン用のアイコン01 Jackson Browne "The Pretender"(1976) semスキン用のアイコン02

  

2004年 12月 26日

a0035172_1502377.jpg大人になるということは成長することなのだろうか?人が成長するということは、どういうことなのだろう? 僕は学生時代にこのような問いに繰り返し囚われ、生き方にはっきりとした道筋が持てない自分に対して、常に煩悶とした行き場のない感情を持て余していた。行き難さの中にも正しい道筋があるはずだと信じ、実際に僕自身が出した答えは、自分自身の何ものかを捨てていくことだった。それから僕は多くのものを意識的に喪失させていったように思う。
いまやこのような問い自体がナイーブすぎるかもしれないし、僕が出した答えも全く的外れで間違いだったのかもしれない。実際、何かを完全に捨て去ることなど不可能なのだ。だから僕は、追いつけないものを常に追いながら、失えない、言い知れない想いを抱えたまま、檻の中のトラのように同じ所をぐるぐると回り続けている。今でも。

Jackson Browne "Late for the Sky"(1974) は僕が学生の頃に最も聴いていたアルバムである。当時、僕はこのアルバムを何度も何度も聴いた。ある意味で学生時代の僕にとって、一番影響を受けたアルバムと断言していい。
"Late for the Sky"や"Farther on"などで歌われる孤独であることのかけがえのなさに胸を掴まれるような共感を抱いたし、"The Late Show"で歌われるそれでも未来に向かって走り出すこと、悲しみを捨て去ることの勇気に大きな希望を抱かされたのだ。まさに大人になるということの彼自身の行き方そのものを描いているのがこの"Late for the Sky"というアルバムなのである。
そういう意味で"Late for the Sky"はジャクソン・ブラウンにとって、希望に満ち溢れたアルバムであったと思う。このアルバムが僕を含め、多くの人たちの共感を得ている傑作であることに全く異存はない。

彼の70年代の作品は"Late for the Sky"以降、The Pretender"(1976) 、そして"Running on Empty"(1977) と進む。正直言って、僕はつい最近までこれらのアルバムを聴くことがなかった。あんなに好きだったジャクソン・ブラウンだったのに、彼の作品は僕にとって"Late for the Sky"で止まっていたのである。今思えば、それはある意味で象徴的なことだったのかもしれない。

今や"The Pretender"、そして"Running on Empty"は、僕にとって"Late for the Sky"以上に心に残るアルバムである。
"The Pretender"や"Running on Empty"には、彼自身を不慮に見舞った妻の自殺という出来事に打ちのめされながら、一人息子に希望の光を見出すというセルフストーリーの影を見出すことができるだろう。確かに僕自身も妻を失いながら、一人息子との生活を送っている点では同じ境遇であり、そんな事実が"The Pretender"に惹かれる理由なのかもしれない。そのことはおそらく当たっていると思う。
彼がその後、自らのしっかりとした足場を得て社会派シンガーという道筋を実直に進んで行くという、無邪気さというのとは全く違う質の凛然とした勁さ(つよさ)、その萌芽を僕はこれらのアルバムに感じるのである。それは確かに"Late for the Sky"の延長線上にありながら、"Late for the Sky"以上に彼自身のナラティブの深さを感じさせ、ある意味で生きることの愛おしさ、優しさをも感じさせる。

村上春樹風に言えば、「デタッチメント」から「コミットメント」への移行であろうか。それは単純に大人になるとか成長するとかとは違う、生きていくことの勁さへの確かな手ごたえなのだと僕は思う。ただ何かを捨てることによって得るのではない、多くのものを自然に抱え込み、常にそれらを引き合うことによってのみ得られる深さなのだと思う。
残念ながら僕は未だにそのような勁さを手にすることができないでいる。ただ、その道筋だけは見失わないように日々ぐるぐると回り続けているのだ。

大人になった僕は、今、"The Pretender"、"Running on Empty"を深い味わいをもって聴くことができる。その後のジャクソン・ブラウンの行き方が正しいのかどうか僕には分からないけど、これらのアルバムで彼が歌い上げる「生きることの切実さと勇気」を僕は強く感じる。学生時代に繰り返し聴いた"Late for the Sky"と同じように、僕は今"The Pretender"を彼の勁さと優しさと共に聴いている。

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Jackson Browne "Jackson Browne"(1972)のレビューはこちら!
Jackson Browne "For Everyman"(1973)のレビューはこちら!
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by onomichi1969 | 2004-12-26 01:52 | 70年代ロック | Trackback(1) | Comments(4)

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Tracked from 音楽なしは、人生なし! at 2005-07-15 18:33
タイトル : ピアノマン
そういえば、若貴騒動の前まで話題になってた ピアノマンはどうなったでしょうかね? 私はピアノマンと言えば、思い出すのが Bill Payne さんです。 一般的な知名度はあんまりないでしょうが。 Little Feat『Feats Don't Fail Me Now』(1974) ... more
Commented by teacherteacher at 2004-12-26 17:47
ジャクソン・ブラウンには、そんな過去があったんですね~。
「誰かが彼女を見つめてる」って曲が好きでした。

お誕生日おめでとうございます!
私は、今日が誕生日なのですが・・昨日のお酒が抜けていない (´∇`)
Commented by onomichi1969 at 2004-12-27 00:53
teacherteacherさんもお誕生日おめでとうございます。
お互いクリスマスプレゼントが誕生日プレゼントだったクチなんでしょうねw

"Somebody's Baby"ですね。「初体験リッチモンドハイ」!!懐かしいなぁ。僕はジェニファー・ジェイソン・リーのファンだったけど(他にあまりいなかったが。。。) フィーヴィー・ケイツも良かったナ。80年代バカ映画の傑作ですw
Commented by Sken at 2005-07-15 18:35 x
私も、内容はお気楽なんですが取り上げました。
今後もよろしくお願いいたします。
Commented by onomichi1969 at 2005-07-17 04:34
Sken様、第2弾、有難うございます。
ジャクソン・ブラウン、心に沁みます。。。
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