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Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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semスキン用のアイコン01 男はつらいよ 備忘録 その2 semスキン用のアイコン02

  

2012年 01月 08日

男はつらいよのシリーズも20作鑑賞。備忘録もその2です。あと10作程度はいこうかな。

1. 男はつらいよ 奮闘篇 (1971年春) 第7作目
マドンナは榊原るみ。彼女が演じる知恵おくれの薄幸の少女は、チャップリンの『街の灯』を思い起こさせる。特に寅さんが榊原るみを沼津駅で見送る場面は涙なしに観られない。寅さんの心情の暖かさを感じる。もちろん最後は振られてしまうので、『街の灯』とは全く違うラストなのだけど。。。
ドタバタ劇の「おなら騒動」も最高に笑えたなぁ。森川信のおいちゃんのとぼけた味わいも最高。この時期の寅さんにハズレなし。

2. 男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 (1981年夏) 第27作目
マドンナは松坂慶子。本作は、とにかく彼女の美しさに尽きる。全編を通して登場する為、その容貌や所作だけでも見応えが十分あった。松坂慶子演じる大阪の芸者ふみが幼くして別れた弟の死を知り、彼の彼女と対面する場面は泣いた。(このシリーズ泣いてばかりいるなぁ) 弟の死と寅さんとの出会いがきっかけとなり、彼女は芸者をやめて対馬での新たな人生に踏み出すことになるのだけど、その結婚相手が美術の田中先生(『仙八先生』)とは。。。ちょっと拍子抜け。この回から満男役が吉岡秀隆に交代する。いよいよ満男もとらや一家の一員として存在感を発揮していくのである。(まだまだ大人しいけど) あと、今回は寅さんと芦屋雁之助とのからみがなかなか楽しかった。

3. 男はつらいよ 柴又慕情 (1972年夏) 第9作目
マドンナは吉永小百合。清楚で可憐。そして美しい。寅さんでなくても惚れちゃうね。その結婚相手がひげ面のデブ男というのには少しがっかり。それなら寅さんの方がいいのになぁと思うのだけど、最初から寅さんはアウトオブ眼中なのね。吉永小百合と宮口精二の親子はこれといった大きな軋轢もないまま最後に仲違いしてしまう。その辺りの経緯は少々物足りないが、その後の展開も含めて、続編となる『恋やつれ』に期待かなという感じ。それにしても、この頃のハツラツとした寅さんは最高に面白いね。おいちゃんが本作から松村達雄に代わるが、寅さんとの絡みはなかなか派手で(多少暴力的なのだが)息の合ったところを見せている。

4. 男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎 (1983年冬) 第32作目
マドンナは竹下景子。彼女は清楚で可憐で、、、と言えば吉永小百合に近いイメージだけど、博のセリフを借りれば、「美しさの中に知性を秘めたとでも言いますか」、、、で、やっぱりお嫁さんにしたいタイプ。内容もシリーズ中で人気のある作品だけあって、見応え十分。シリーズ中で人気のある作品だけあって、見応え十分。やはり最後の柴又駅のシーンが素晴らしい。竹下景子が寅さんの袖を掴み、その顔を潤んだ瞳でじっと見る。その視線に答えられない寅さん。これはシリーズ最高のラブシーンではないかと僕は思う。別れの後に「・・・という御粗末さ」とつぶやく寅さんのドテラの後姿が寂しい。あと10年若かったらなぁと。そんなラブシーンの始まりを予感してすっと脇に引くさくらの所作も彼女の複雑な感情が見え隠れしてなんとも言えない味がある。初期の頃とは違う落ち着いたとらやの雰囲気も良し。下條正巳のおいちゃんはあまり人気がないのだけど、でしゃばらない味わいはそれはそれで良し。

5. 男はつらいよ 寅次郎恋やつれ (1974年夏) 第13作目
マドンナは2回目の吉永小百合。9作目の柴又慕情の続きということで。今回も恋愛という点では寅さん最初からアウトオブ眼中。焦点は吉永小百合演じる歌子の自立と父親(宮口精二)との和解である。そこに主に絡んでくるのは、寅さんではなく、今回はさくらと博である。この二人が本作品の立役者だろう。茶の間でのいわゆる「幸福談義」では博の言葉が光る。このころになると、博は監督である山田洋次の代弁者ともいえる存在で、今回のお題「幸福とはなにか?」を理屈っぽく答える博に山田洋次の思いが重なるのである。(その対極は理屈ではない寅さんなのだろうけど) 最後のとらやでの歌子と父親の和解のシーンは泣けた。シリーズで一番泣けるシーンだったかもしれない。あの宮口精二を泣かせるのだから、もうしょうがないね。
冒頭に、寅さんがタコ社長とさくらを連れ立ってお嫁さんにしたいという女性に会いに行き、超速で振られてしまうのだけど、その相手が宮沢保のお母さん(『金八先生パート1』)というのが少しツボだった。
松村達雄のおいちゃんはこの作品で最後。今回もなかなかいい味を出していて(パチンコ好きのちょっとやくざなおいちゃん)、ちょうどこなれてきたって感じだと思うのだけど、彼はおいちゃん以外の役でこの後も結構活躍することになるので、このあたりが潮時だったのかな。彼はおいちゃんをうまく演じていたけど、おいちゃんそのものにはならなかったのだな。

6. 男はつらいよ 寅次郎忘れな草 (1973年夏) 第11作目
マドンナは浅丘ルリ子。彼女が演じるリリーの1作目。リリーは、寅さんが憧れるマドンナというよりも女版の寅さんとでも言うべき存在。だから寅さんは、彼女のことを自分の分身のように想う。これも寅さんの愛なのだ。この頃のとらやは茶の間談義が楽しい。今回は「中流家庭とは?」「上流階級とは?」ということについて話題になり、いつものように博の少々理屈っぽい意見(これは山田監督の意見なのだが)でしめる形になるのだが、今回はさくらが寅さんのことを「お金で買えないものをたくさんもっている」(それを「愛」だと表現したのは少し唐突だったけど)といって褒める場面が印象に残った。近年流行りの「プライスレス」の奔りが寅さんのライフスタイルなのである。まぁ、何だかんだ言って、寅さんのそういった生活を支えているのはさくらで、リリーへのフォローも、北海道の開拓農家(寅さんが2-3日働いてあまりの辛さに投げ出してしまう)へのフォローも、寅さんの金銭面も、心の拠り所も、全部さくらが支えているのがこの一篇で分かるのだ。あと、ピアノ騒動は面白かったけど、ドタバタもパターン化してきたって感じ。

7. 男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 (1982年夏) 第29作目
マドンナはいしだあゆみ。寅さんの悲恋物語。ドタバタもなく、いつもの寅さんとは全く違う雰囲気だったけど、本作は、ある意味で寅さんとは何者か、実はどういう人物なのかということをしみじみと感じさせる素晴らしい一篇であった。寅さんは女性から本気で求められると、受け身になって、すっと自らを引いてしまう。そして自分を「駄目な男だ」と言って一人涙を流す。恋に恋して、恋できない臆病者。それが寅さんなのか。寅さんの流した涙を思い、12歳の満男と同じように悲しくて僕も泣いた。寅さん、あなたはただひたすら優しすぎるのだ。そういう愛があってもいいじゃないか。寅さんが満男に言う。「お前もいつかは恋をするのだろうな。可哀相に」 すると満男が答える。「僕、恋なんかしないよ」と。(10年後の自分に聞かせてあげたいセリフだ)
この回に津嘉山正種がいしだあゆみの元カレで登場する。津嘉山と言えば、オープニングでのドタバタ劇専門でずっと登場していたが、ついに本編昇格かと。彼はその後、『真実一路』でも部長役で登場している。その後のOPドタバタはアパッチけんが引き継いでいる。

8.男はつらいよ 寅次郎子守唄(1974年冬)第14作目
マドンナは十朱幸代。前半、春川ますみが子供を引き取りにとらやにやってくるシーンが良かった。この回より、おいちゃんが下條正巳に変わって、とらやでのドタバタがかなり抑えられることになる。(ドタバタするのはタコ社長と寅さんくらいかな)下條のおいちゃんは前二人と違って至極真面目。それを察したのか、おばちゃんがところどころでお笑い担当となる。彼女の「あの、何てったっけ、ひげ中顔だらけの、ほら」というセリフは、森川信の「まくら、さくら」を思い起こさせた。
十朱幸代は可愛らしいけど、この頃になると寅さんもあまり入れあげなくなって、あっさりと社会の服部先生(『金八先生』)に譲ってしまうのである。

9.男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花(1980年夏)第25作目
マドンナは3回目の浅丘ルリ子。リリー3作目である。毎度パターンの沖縄編という感じかな。ラストシーンも前回の変奏故に寅さんとリリー、とらやの面々も僕らも、予想通りのお約束なラストにがっかりというよりもひと安心か。。。寅さんの「所帯を持つ」というセリフも現実感が乏しく、正に夏の夜の夢の如き一篇でした。

10.男はつらいよ 僕の伯父さん(1989年冬)第42作目
マドンナは壇ふみ(なのかな?) 『男はつらいよ』もいよいよ満男と泉を中心にしたいわゆるゴクミシリーズに突入。満男もいつの間にか高校卒業。成長したなぁと言っても、この作品もう20年以上前なのね。(当時『男はつらいよ』は中高年向けの正月映画だと思って全く観る気もしなかったなぁと感慨しきり。。) 満男は僕と同世代。この作品の頃、僕は大学生で、彼と同じように無様な青春を謳歌しておりました。愚かだったなぁ。全くもって愚か。思い起こせば恥ずかしきことの数々。そんな自身の歴史を反省しつつ、満男に感情移入しておりました。ただ、満男と博の場面で、どちらかというと博の方に気持ちが寄り添うのは、僕自身が今や高校生の子供を持つ父親だからだろうな。
寅さんも昔みたいな元気はないけど、まだまだ気持ちは若い。老成しつつ、少年のような清い心を持ちつづけているところが寅さんの魅力。その言葉はひたすら誠実なのです。会うは別れの始めか。。。時代はバブルだけど、とらやにそんな雰囲気はないなぁ。

つづく

by onomichi1969 | 2012-01-08 22:32 | 日本の映画 | Trackback | Comments(0)

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