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Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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semスキン用のアイコン01 サニーデイ・サービス 『サニーデイ・サービス』(1997) semスキン用のアイコン02

  

2011年 10月 14日

サニーデイ・サービス 『サニーデイ・サービス』(1997)_a0035172_047582.jpgサニーデイ・サービスを初めて聴いたのは、社会人になりたての1995年頃。シングル『青春狂走曲』がスペースシャワーTVでベビロテされていて、すごく耳に残った。そして、『恋におちたら』。この曲は、胸がキュンとなるような歌詞と旋律に、軽やかだけど、ずんと響くベース音が特徴的で、心地良いと同時にずしりとした質量を感じる曲だった。アルバム『東京』はこの2曲が傑出していたと思う。

1997年早々に発売された傑作『愛と笑いの夜』。僕にしては珍しく、発売直後に購入した。アルバムとしての完成度は、前作を優に凌ぐ出来で、とにかく楽曲が粒ぞろい。全体的に音の密度が増して、ロック色が強くなっているけれど、その中に彼ら特有の物悲しくも、甘酸っぱい、気怠さの残る歌詞と旋律が生きている。彼らのアコースティックなイメージを損なうことなく、ロックの重みを感じさせる、彼らの集大成的な作品となっている。当時、僕はこのアルバムを飽きずに繰り返し聴いた。楽曲的に最初の2曲のインパクトが大きいけれど、全体としてバラエティに富んでいて、『JET』だとか、『96粒の涙』とか、『サマー・ソルジャー』とか、涙が出るほどいい曲なのだ。どこかで聴いたような懐かしいフレーズ、確かにはっぴいえんどのソフトな部分(『風街ろまん』の方)の模倣のようにも思えるけど、そこには時代の違いがあり、25年を隔てた新鮮な味わいがある。
『愛と笑いの夜』は、1月に発売されたのだけど、アルバム全体として夏のイメージが強い。『サマーソルジャー』とか、『海岸行き』とか。『東京』は春のイメージ。そこには彼らなりの日常的な季節の連続性を感じる。

とにかく、『愛と笑いの夜』は、楽曲が素晴らしく、その年の日本のロックを代表する素晴らしい傑作であった。しかし、1997年のサニーデイ・サービスは、それだけで終わらなかったのだ。

同じ年の10月、『サニーデイ・サービス』が発売される。1曲目、『baby blue』。僕はこの曲の冒頭のギターフレーズを聴いた瞬間、アルバムがとんでもない傑作であることを確信した。
『サニーデイ・サービス』もバラエティに富んだアルバムであるが、アルバムとしての印象はどうしても1曲目『baby blue』によって特徴づけられる。これまでとは異質の暗く、重いメロディ。アコースティックなのだけど、デジタルを感じさせる音の質感。あのベースの旋律のせいだろうか、世紀末的な終末観を自然に醸し出すサウンド。バラード風の非日常のSF世界を想像させる。今ならば、レディオヘッドの音楽と比較できるかもしれない。(同じ年に発売された彼らの傑作『OK Computer』とシンクロしつつ)

もちろん『baby blue』以外にも、『NOW』や『枯れ葉』、『虹の午後』、『星を見たかい?』など、素晴らしい曲が多く、全体としてみれば割と明るいポップさに彩られたアルバムなのであるが、やはり1曲目の質感がアルバム全体の印象を決定していると感じる。そして、7曲目、12曲目。

行き先違いの列車に揺られ走る
それならそれでいいじゃないか
昼と夜の間をゆらゆら揺れる
こんなことを待ってたように思う baby blue

見張り台で監視は眠り続ける
はじめっからだれもいないようなもの 約束の時間さ

どこかでだれかとだれかが恋におちる
そんな風景を見に行こうか
昼と夜の間をゆっくりと駆ける
そんなことを待ってたように思う baby blue

サニーデイ・サービス "baby blue"

ピンク・ムーンがやって来てアパートのドアをたたく
船出の夜 きみは思う「花束を忘れた」と
今夜また新しい月が登る
きみも部屋の窓から顔を出せよ RIDE ON RIDE ON

サニーデイ・サービス "PINK MOON"

きみの声がすれば いつだってぼくは振り返ってしまうんだから
もう灰色の列車に乗り遅れてしまった
乗り過ごしてしまったじゃないか

サニーデイ・サービス "bye bye blackbird"

一体、ここは何処で、いつの時代なのか? 昼と夜の間とはどんな瞬間なのか?
baby blueの風景。その曲を聴くたびに、僕は灰色列車に揺られて、昼と夜の間を行き来しつつ、ピンクムーンが夜空を照らす少し狂ったもう一つの世界に導かれる。

サニーデイ・サービス 『サニーデイ・サービス』(1997)_a0035172_0493310.jpg

by onomichi1969 | 2011-10-14 00:42 | 日本のロック | Trackback | Comments(0)

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