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semスキン用のアイコン01 Brian Wilson "SMiLE"(2004) ~素晴らしい新作~ semスキン用のアイコン02

  

2004年 10月 17日

a0035172_14413450.jpg山下達郎が自身のラジオ番組でブライアン・ウィルソンの新作『スマイル』をひたすら流し続けたそうだ。本人は番組の最初と最後しか登場しなかったとか。このアルバムが発売されたということは、ビーチボーイズを愛する人たちにとって、大事件というか、まさに ‘Dream comes true’ なのだろうなぁと改めて思い至る。
『スマイル』は幻のアルバムである。傑作『ペットサウンズ』(1966)発売後、ブライアンが「アメリカのルーツを探る壮大な旅、アメリカ史のタイムトリップ」というコンセプトで『スマイル』<当初は『堕天使(Damned Angel)』という題名だった>の制作を開始したが、ブライアン自身の不調<ドラッグ、プレッシャー、精神変調などなど>やレコード会社とのトラブルによって、アルバムはお蔵入りになってしまったのだ。<その残骸が『スマイリースマイル』(1967)である> 
以来、いわゆる、「スマイル伝説」(これとかこれなど)と言われる様々な憶測がなされ、マニアの間では『スマイル』のブートが高価で取引された。一般のファンの間でもこの『スマイル』という作品は幻の名作であり、失われてしまったが故の哀しさ、或いは美しさを魅惑的に漂わせる、そういう作品だったのである。幻であることが、多くの人の想像力と好奇心をくすぐる孤高の存在感を示していたわけだ。

そして、ついにブライアンが自らの伝説と呪縛を解放する時が来た。彼は、盟友ヴァン・ダイク・パークスと再びタッグを組んで、37年封印されていたパズルを完成させたのだ。
当時発売されていれば、前作『ペットサウンズ』を超えて、ビートルズの『サージェント・ペパーズ』も平伏し、ストーンズの『サタニック・マジェスティーズ』なんか吹っ飛ぶ世紀の大傑作だったことだろう。一回聴いただけで、その手ごたえをものすごく感じる。確かに、確かにブライアンの“失われた”ファルセットでこの作品を聴きたかったという思いも否定できない。でも、素晴らしい。
この作品は、ブライアンの歴史である。僕らは、『スマイル』を聴きながら、彼の個人史を紐解いているのである。さらには、そこにアメリカの歴史があり、ロック音楽という可能性の魅惑的世界が広がっている。それはパンドラの箱のようでいて、実は玉手箱なのかもしれない。しかし、僕はこうも思う。この『スマイル』という作品は、今のブライアンだからこそ完成し得たのではないかと。彼の暖かさを増した歌声、アルバムジャケットの明るい色合い、そして、ブライアンの茶目っ気たっぷりの笑顔。僕はそう思わずにはいられない。

繰り返し聴いている内にこの新しいアルバムの世界に素直に浸れるようになってきた。これは『スマイル』という作品だ。断片ではない壮大な作品だ。「作品」を素直に味わう、その喜び。久しぶりにそんな思いをしみじみと噛みしめている。ありがとう、ブライアン。素晴らしい作品だよ。
                      
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by onomichi1969 | 2004-10-17 14:19 | 00年代ロック | Trackback(4) | Comments(6)

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Commented by もりたん at 2005-12-05 19:23 x
onomichiさん、ワタシもこの盤を最近ようやく聴いて、超ヘビーローテーションで聴いてます!(≧∀≦)ノ
ワタシも「今のブライアンだからこそ完成したのではないか」と思ってます。
今のバックバンド・メンバー達との息がピッタリなんだろうな~なんて思うんですよネ♪
あ、コチラの記事もトラバさせていただきました!(≧∀≦)ノ
Commented by onomichi1969 at 2005-12-06 22:55
もりたんさん、よくぞこのエントリーに目を付けていただきましたぁ~。
いいですよね、このアルバム。
ブライアンは、ビーチ・ボーイズだけじゃないのです。

このエントリィは1年以上前の文章ですが、あのころの感動を少し思い出しました。。。というか、最近、SMiLEを聴いてなかった(´∇`)
Commented by ナイアガラ at 2006-08-07 08:21 x
僕は達郎さんの大ファンなので、TOKYO-FM『SUNDAY SONGBOOK』は毎週欠かさず聴いてます(葉書も毎週だしてます....)
そうです、この『SMILE』を全曲丸ごと流しましたよ。本人は最初と最後にしか登場しませんでした....。「私は何も言いませんが、皆さんはこれを聴いて何を感じたのでしょうか?」という一言だけだった覚えがあります。感想を何も言わずに、ただアルバムを流した...というだけでも、達郎さんにとっての思い入れが察せる放送でしたよ。圧巻でした!!
で、この『SMILE』ですが.....。初めて聴いた時は心底感動しましたよ。
あまりにも素晴らしすぎるので、上手い言葉が見つかりません。
この『SMILE』を引っさげた来日公演はそれ以上に凄かったです。
東京で2回観に行ったのですが、両日ともに最高のライブでしたよ!!
『PET SOUNDS TOUR』と同じく2部構成のライブで、ブライアンの神懸ったパフォーマンスには終始目が釘付けでした。
Commented by onomichi1969 at 2006-08-08 01:13
ナイアガラさん、僕も時間が合えば『SUNDAY SONGBOOK』を聴くのですが、さすがにこの放送は聴いていませんでした。またしてもさすがです。リアルタイムで聴いたらさぞかし痺れたことでしょう。。。
来日公演、、、行きたかったけど行けませんでした。。。2回行かれたのですね。ただひたすら羨ましいです。
Commented by 240_8 at 2007-04-21 12:27
こんにちは!!
私もようやく本作をアップしたのでTBさせて頂きます。

>今のブライアンだからこそ完成し得たのではないかと。

同感です。私はライブに行きそこなったのですが、相当いいライブだったらしいですね。ここまで来ると凄いとしかいいようがないです。あとバックのジェフリー・フォスケット等の演奏もすごい。彼らの力によるところも大きいですね。
Commented by onomichi1969 at 2007-04-23 01:12
240_8さん、こんばんわ。
この記事を書いたのも、もう2年半前ですねぇ。はやいもので。
僕もブライアンのコンサートには行ってませんが、その素晴らしさについてはいろんな所で耳にします。
なにはともあれ、こういったアルバムが37年の時を経て、現代に蘇ったこと、そしてそれが素晴らしい出来映えだったこと、ブライアンの復活と合わせて、それはもう奇跡と言っていいかもしれませんね。
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