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semスキン用のアイコン01 Miles Davis "Tribute to Jack Johnson"(1971) semスキン用のアイコン02

  

2011年 01月 03日

a0035172_9224769.jpg最近、電化マイルスにハマっている。
電化初期の代表的なオリジナルアルバムである"In a Silent Way "(1969)、"Bitches Brew"(1970)、"Tribute to Jack Johnson"(1971)、"Live-Evil"(1971)、そして"On the Corner"(1972)あたりを繰り返し聴いている。これらのアルバムは、それぞれに特色があって、どれとして同じではない。にも関わらず、どれもがアルバムとして完成されていて、唯一無二の傑作であり、エレクトリックジャズというか、ジャズロックというか、それはもう電化マイルスという明瞭たるジャンルの中にそびえ立つ5つの崇高な頂といっていいだろう。

その中でもっともロック色の強いアルバムといえば、"Tribute to Jack Johnson"ということになるだろうか。アルバムは、25分強の2曲のみ。特にジョン・マクラフリンのギターとビリー・コブハムのドラムがいきなり炸裂するロック全開の1曲目Right Offが最高である。マクラフリンとコブハムがひとしきりロックした後を受けて、マイルスのトランペットが同じようなテンポでロックを鳴らし始める、その導入部が何とも言えずしびれる。電化マイルス第1期のドラムといえは、ジャック・デジョネットが不動のメンバーであるが、このアルバムのロック・テイストを引き出したのはビリー・コブハムの力強いビート感覚溢れるドラミングだろう。当時の批評曰く、「Bitches Brewのすべてのフラッシュが1つの輝かしいイルミネーションに集約した」のがJack Johnsonなのである。

前作"Bitches Brew"がジャス史上最高のセールスを記録したのに対し、Jack Johnsonは、レコード会社から殆ど無視され、全くと言っていいほど売れなかった。マイルスは、そのことを「ダンスのできる音楽、ロックに近すぎたからだ」と回想している。「白人のロック・ミュージシャンがやるような音楽を黒人のジャズ・ミュージシャンがやってしまったことに皆戸惑った」のだという。マイルスらしい感想だと思うが。。。

Jack Johnsonには、スライ&ファミリーストーンとジェームズ・ブラウンの曲からのリフの引用がある。当時、マイルスは、スライやJBの音楽を支持しており、また、ジミ・ヘンドリックスやサンタナと交流があった。状況的にはマイルスが最もロックに近接した時期であり、以降、そのベクトルはファンクへと向かうことになる。ジョン・マクラフリンは、マイルスから一言「ジミ・ヘンドリックスのように弾いてくれ」と言われたという。実際、マイルスは、後年、ピート・コージーというジミヘン風のサイケなギタリストを手に入れるわけだが。。

最近、マイルスの自叙伝を読んですごく感銘を受けた。1940年代後半のNYアップタウン「ミントンズ」でのバードとディズと若きマイルスの初めて邂逅、その時のセッションの様子など、当時の熱いジャズシーンの息遣いがリアルに伝わってくる。マイルスが語るチャーリー・パーカーやコルトレーンの人物像やジャズ・ジャイアンツの時のセロニアス・モンクとの一件など、とにかくマイルスの語り口が素晴らしい。彼の語り口そのものがジャズを奏でているような、リズミカルで、読む手をぐいぐいと引き込む。本書は1980年代後半の著作で、60歳を越えたマイルスが過去の出来事を年代別に語っていく構成なんだけど、その記憶力たるや尋常じゃない。描写が細かすぎて、臨場感というかライブ感覚溢れすぎ。。。訳者中山康樹氏はブライアン・ウィルソンの自叙伝も手がけていて、そっちもすさまじい内容だったけど、マイルスのもすごかった。マイルス・デイビスっていうのは、歴史を作り、それを自ら総括してしまったという意味で、ジャズの帝王、指揮者であり、また文学者だったのだなぁと感じた。まぁおすすめです。
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by onomichi1969 | 2011-01-03 23:29 | 70年代ロック | Trackback | Comments(2)

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Commented by ryo_1989 at 2011-01-05 23:22
お久しぶりです!
俺は最近、寝る前にIn a Silent Wayを聴いています。
ジョン・マクラフリンの浮遊感たっぷりのギターが最高ですよね。
Tribute to Jack Johnsonはあんまり聴かないけど、記事を見て聴きたくなりました。
実はLive-Evilを持っていません(汗)。
確実にハマると思うのですが(笑)。
Commented by onomichi1969 at 2011-01-06 00:04
ryo_1989さん、こんばんは。
マイルス・デイビスはハマりますよね。50年代のクインテットも良いし、60年代モード時代のⅡ期も、電化時代も、どのマイルスも最高です。何がいいって、やっぱり彼の音楽的革新性とソウル溢れる「音」なのだと僕は思います。特にマイルスのトランペットの音は、彼の声であり、ソウルであります。だからしびれるのです。
マクラフリンやチック・コリアのソロもいいけど、マイルスがいないとやっぱり物足りないかなぁ。
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