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semスキン用のアイコン01 Bob Dylan "Modern Times"(2006) semスキン用のアイコン02

  

2010年 10月 03日

a0035172_23554375.jpgこのところ、音楽各誌で発表される00年代を総括したベストアルバムの選出企画でいずれも上位にノミネートされ、ミュージックマガジン誌に至っては、ここ10年で最も優れたアルバムに選出されたのがBob Dylan の"Modern Times"(2006)である。前作"Love and Theft"(2001)も同様に評価が高い。

僕は"Modern Times"と同時期に"Love and Theft"を聴いたので、この2枚のアルバムの印象は近い。楽曲的には、60年代の『追憶のハイウェイ61』や『地下室』あたりで頻繁に演奏されたディラン調のロック&ブルース、現代風にアレンジされたこれも昔ながらのフォーク調バラード、トム・ウェイツ風のクラシカル・ミュージカル調のバラード、、、これらの曲を以前よりも数倍しわがれたディランの声が歌う。構成はこの繰り返しであり、単調である。ディランというのは改めて引き出しが少ない人なのだなぁと別の意味で感心するくらい。

この2枚のアルバムを僕は一時期よく聴いた。アルバムは単調のわりに飽きなく、くり返し聴かせるだけの十分な魅力があり、聴けば聴いただけの新たな発見があったから。ただ、これはディランの過去の名作に共通することであり、最新2作品に限る話ではない。言ってみれば、この2枚のアルバムは60年代の自分の作品をセルフカバーして現代風に焼き直ししたものとも思える。そこに本質的な新しさはあまり見出せないが、あるとすれば、彼の極端にしわがれた声とその多少リラックスした歌う姿勢だろうか。まぁそれが今の70歳を目の前にしたディランの変わりようもないロックであり、ある意味で、ディランにしか表現できないロックというものの未踏の最先端なのだから、僕らは素直にそれを受け入れるべきなのだろう。

00年代のディランがこれまでの不遇の20年間を取りもどすようにセールス的にも高い評価を受けているのは、彼が指し示す「最先端のロック」が未知の領域として評価されている所以なのだろうか。70年代後半にフーのピート・タウンゼントが映画『キッズ・アー・オール・ライト』の中で「おやじのロック」の到来を高らかに宣言した時、彼はまだ30代も半ばだった。それが今や、60歳を優に超えたディランやストーンズに代表される「おじいちゃんのロック」に行き着いた。これが限界であろうか。何事にも限界はあって、ロックにもアビリティとしての限界はある。それを抱える真摯さこそがロックの正しい捉え方なのだと僕は思う。

ディランは、90年から7年間自作曲のスタジオ・アルバムを作らない時期があり、そのことに関してインタヴューで「過去にいっぱい曲を作ったので新曲を作る必要を感じない」と発言している。00年に入り、彼は過去にいっぱい作った曲を再生産するように新曲を生み出していく。02年からはギターを弾かず、キーボードを担当するようになった。そういう意味でディランは変わった。キースも変わった。ミックはかなり以前より変わっていた。

ロックが年輪となった時代。それが現代である。みうらじゅんがこう言ったという。「もしディランのアルバムをどれか一枚聴こうと思うなら、ディランが今の自分と同い歳の時に作ったアルバムを聴け」 それは正しいような気もするが、その考え方に従えば、ロックはもう少しで完全にカッティングエッジを失うだろう。それをかろうじて抱えているのがボブ・ディランやストーンズだという現代。それを30年前に予言したピート・タウンゼントはすごいよ。悲しいけど、すごい。

僕は今40歳だから、ディランで言えば「ゴスペル三部作」ぐらいか。不遇の時代の始まりですな。

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by onomichi1969 | 2010-10-03 16:39 | 00年代ロック | Trackback | Comments(0)

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