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Rock and Movie Reviews : The Wild and The Innocent

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2010年 03月 09日

誰も知らない_a0035172_23501297.jpg是枝裕和監督の映画『誰も知らない』である。
2000年以降の日本映画の中で、僕にとっては、『ユリイカ』や『トウキョウソナタ』と並ぶ秀作である。なんというか、個人的な感動や感傷を超えた普遍的な問題意識を喚起する作品として、現代的な心情の問題を突きつける衝撃的な作品として、それでいて心揺さぶられる個人的に切実な作品として、その多面さにおいて、僕の中で印象が深い。

『誰も知らない』は、登場人物達の絶対的などうしようもなさを残酷なまでにリアルに描ききった作品である。親たちは何の悪気もなく、子供を突き放し、結果的に彼らを疎外する。そのどうしようもなさ。その衝撃。そして、子供たちは何の屈託もなく、親たちを赦し、結果的にそういう社会を自明のものと受け入れる。そのどうしようもなさ。その衝撃。

カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』や『日の名残り』の主人公たちを思い出す。彼らは自らの運命を受け入れ、そこから決して逸脱することがない、限定された世界の住人たちである。彼らの独白は、限定された世界から決して外れない、彼らの世界観の中でこその語り、その絶対的な記憶であるが故に、僕らにある種の違和と共に欠落を想起させた。
それが『誰も知らない』の子供たちにも言える。諦念という言葉では当てはまらない現代的な心情、そのどうしようもない底の浅さと生来的な欠落を感じさせる。

しかし、全く救いのない物語の中に、子供たちの生き生きとした姿を感じてしまう(『空気人形』の人形と同じに)、そこで描かれる救いとは一体何だったのだろう。彼らが否応もなく受け入れた世界。それを自明のものとして引き受ける逞しさとアカルさに現代的な救いと希望を感じてしまう。ある種の恐ろしさをセットにして。。。2004年日本映画

by onomichi1969 | 2010-03-09 00:08 | 日本の映画 | Trackback | Comments(0)

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